第49話

 後日、探偵サークルの四人はオー・ハライ探偵事務所を訪れた。


そうちゃんがまさか関わってるとは思わなかったんだけど?」

 ソファに腰かけた佐伯さえきが目を細めると、宗介そうすけはあっけらかんとこたえた。

「そんなこと言われても。依頼人同士に繋がりがあったのは偶然じゃん?」

「でも中学生からの依頼を受けるなんて」

 佐伯は納得がいかない様子でソファにふんぞり返る。秋斗あきとたち三人は黙って二人のやりとりを眺めた。


 今回の依頼人である本間ほんまゆいのストーカーの正体は、義妹の前川まえかわ寧々ねねであった。

 寧々が宗介の探偵事務所の前でうろうろしていたところ、ちょうどスタッフの一人が彼女に気づき、そのまま事務所へ案内したのだという。

 探偵への依頼はお金がかかることだ。それを知っていた寧々は依頼をするのを最初躊躇ためらっていたが、宗介が無料で引き受けようと言い出したらしい。


 宗介は佐伯の発言に肩をすくめた。

「依頼者は依頼者でしょ。ちゃんと彼女に有益な情報をあげないと」

 そんな話をしていると、レイが扉をすり抜けて現れた。オカルト研究サークルで拾ってきたギャルの幽霊は、相変わらずこの探偵事務所で調査の手伝いをしている。

 レイは宗介に向かって敬礼けいれいし、なにかを報告しているようだった。秋斗は霊感のない春樹はるきにレイがいることを耳打ちする。


「レイさんいるの? 元気ー?」

 視えていないのに春樹はレイに話しかけた。レイはパッと春樹の方を向き、笑顔でなにかしゃべっている。

 宗介が簡単な通訳をしてくれた。

「元気だよ! って言ってるよ。あ、今ちょうどレイから報告を受けた依頼なんだけど、これがまためずしい依頼でね。あるコンセプトカフェに行きたいんだけど、一人で行けないから同行してほしいっていう依頼があったんだ。そんな依頼初めてで、とりあえずそのコンセプトカフェの様子見と、依頼人がどんな人かレイに調査してもらってたんだ」

「レンタル友だち、みたいな感じですか?」

 秋斗は思わず口にする。


 レンタル友だち。その名の通り、友だちをレンタルするサービスだ。そういった会社があることを最近テレビでやっていたので覚えている。一定の料金を払い、その時間だけ友だちのように振る舞うのだそうだ。

 宗介は眉尻を下げて笑った。

「もううちは探偵事務所じゃなくて、なんでも屋みたいだよねぇ」


 そんな話をしていると、ピコンッとスマホの通知音が鳴った。秋斗とのぞみは常にマナーモードにしているため、反応を示さなかったが、春樹、佐伯、宗介の三人は一斉に自分のスマホを確認する。どうやら佐伯のスマホだったようだ。

 彼女は目線を上から下へと動かすと、後輩三人にその画面を見せた。

「次の依頼だ」


『変なものを発見したのでぜひ見ていただきたいです。オカルト研究サークル 溝口みぞぐち


 見たことのある名前に三人は顔を見合わせた。

 変なもの、とはなんだろう。



〈第七章 ストーカー事件 終〉

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