第35話
途中慌てる場面もあったけど、なんとか依頼人の要望は叶られそうだな。家に帰り、秋斗は一人息をつく。
休み明け、佐伯からの呼び出しで、授業を終えた一年三人は『たちばな喫茶』に向かった。今回の依頼者である
たちばな喫茶に行くと、オーナーである
「三人ともお疲れさん。白石からは学食一食分の料金しかもらってないから、今日は私が君たちにおごってやる」
先輩面の佐伯はふんすとメニューを差し出した。
時間的に夕飯にはまだ早いのだが、彼女がおごると意気込んでいるようだし、なにか注文するか。秋斗はふぅっと息を吐き出し、メニューを受け取った。
隣に座る春樹は食べる気満々であるが、希はそこまでお腹が空いていないからとデザートを頼むようだ。
「
運ばれてきたオムライスを頬張りながら、春樹はだれにともなく質問する。秋斗は注文したナポリタンをフォークでくるくると回した。
「んー、ちゃんと約束とか守りそうなタイプな気がするけど、どうだろうな」
「私は破るに一票。面白半分で依頼してる気がするなー」
秋斗の応えに対し、希はスパッと自分の意見をのべた。プリンアラモードを口に運んだ彼女は「おいしっ」と顔をほころばせる。
佐伯は三人の会話に「はははっ」っと笑った。
「さすが
「なんでそんなことわかるんですか?」
やけに自信満々な佐伯に対し、秋斗が思わず
「女の
一年三人は優雅にココアを飲む佐伯を見つめた。探偵サークルの会長なのに推理をしたことがない探偵。この探偵の勘は妙に当たる。
*
――翌日、英語の授業に白石の姿はなかった。彼の友人の一人が、「腹痛で休むそうでーす」と出席を取っていた教授に教えている。
「まじか」
秋斗は空席を見つめながら思わず口にする。秋斗、春樹、希は、なんともいえない複雑な表情で顔を見合わせた。
〈第五章 潜入調査 終〉
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