第11話 またお化けの話?①
「茉鈴大丈夫かー?」
母、
「ははっ、茉鈴は俺らの子どもなのに貧弱だなぁ」
父、
笑いごとじゃないよ! 茉鈴は
「バカは風邪を引かない。茉鈴はバカじゃねぇってことだな。あたしらの遺伝はどこいったんだよー」
両親は顔を見合わせてゲラゲラと笑った。
近所では有名な不良っ子だったらしい霧子と文雄。幼なじみの二人はよくヤンチャをしていて(
ほら、これが
父は部屋の時計をチラッと見ると、おもむろに立ち上がった。
「じゃあそろそろパパたちは仕事に行くからな」
「今日も
宗介は霧子の弟、すなわち茉鈴の
すでに仕事に行く支度を済ませてある両親は、「「いってきまーす」」と言って茉鈴の部屋を出ていく。ガチャッと鍵を閉める音が聞こえ、一気に心細くなる。二人がいなくなった
「いってらっしゃーい……」
ベッドの中で茉鈴は小さく返した。
とはいえ、薬が
早く来ないかな、宗ちゃん。
茉鈴は静かに眠りについた。
*
「……んん」
どのくらい寝ていたのだろう。目を
「おはよう、茉鈴。よく眠れた?」
宗ちゃんだ! 茉鈴はガバッと体を起こすが、すぐに「うっ……」と眼がしらを抑えた。しまった、勢いつけ過ぎた。頭がくらくらする。
宗介は茉鈴が小学校入学時に両親に買ってもらった椅子に座っていた。学習机とセットで売っていたもので、椅子は高さが調節できる。彼は最大限低くしていたみたいだ。
「急に起きると危ないよ」
宗介は苦笑しながら立ち上がると、台所へと移動した。
茉鈴はクンクンと匂いを
「良い匂い!」
台所からお盆を運んできた宗介はベッドのそばに腰をおろす。
「はい、どうぞ」
お盆の上にはお
「なにすんの宗ちゃん!」
「どう考えても茉鈴はお粥と水でしょ」
宗介はココアの入ったカップを手に取り、ゆっくりと口に含んだ。
「はぁー、うまい」
満足げに目を細める彼を、茉鈴はむーっと頬を
宗ちゃんってちょっと意地悪なところある。良いものがあると言って見せてくれたのがおもちゃのゴキブリだったし、茉鈴のゲームソフトを勝手に借りていくし、前に看病に来てくれたときは顔に落書きされたし。
今回だって、茉鈴が大好きだと知っていてわざとココアを飲んでいるのだ。
茉鈴はため息をつくと、仕方なく「いただきます」と手を合わせた。熱が出るといっつもお粥。もういい加減
「まあまあそんなに
宗介に言われるがまま、れんげで一口
ん! たまごが入っている。これは期待できるかもしれない。茉鈴はふぅふぅと息をふきかけてから、大きく口を開けて食べた。
「おいしー!」
そう叫ぶと、宗介は満足そうに口角を上げた。
「いつも普通のお粥だと飽きちゃうと思って、今日はたまご粥にしてみたんだ」
「たまごのこの半熟がすっごく良い!」
「元気になったみたいで良かった。昨日から寝込んでたんだよね?」
「うん、昨日は遠足だったのに。また休みなの」
しょんぼりと肩を落とす彼女の頭を、宗介は優しくなでた。
「僕もどうにか対処してあげたいんだけど。実体がなかなか姿を見せないからさ」
「実体? ってなに? またお化けの話?」
茉鈴が
宗介は無類のオカルト好きで、ネットで知り合った
茉鈴は
「ねえねえ教えて宗ちゃん、実体ってなに? お化けのお話もっと聞きたい! 学校休んでると暇なの!」
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