第9話 長髪イケメン①
女の子の霊はトコトコと
「うん、視えるし話せるよ」
急に座ったりしゃべったりした希を、
「あ、もしかしているの?」
「希の前に女の子、佐伯さんの肩に鳥、足元に犬の霊がいる」
春樹の問いに対し、秋斗が
佐伯は
「そこの彼女は対話もできるのか」
「あ、はい」
あいさつがまだだったことに気づいた希は、サッと立ち上がり
「初めまして、
佐伯は「ほう」と希を面白そうに見つめ、
「いいなぁ、みんな視えて。なんか俺だけ仲間
この部屋で唯一視えない春樹は口を
「たしかに、これだけ霊感がある奴と一緒にいるのに視えないのは、なかなかのレアキャラだな」と佐伯。
「霊感のある人のそばにいれば、視られるようになるんですか?」
興味をそそられた秋斗の声色は少し高い。今まで霊感のある人間になかなか出会ってこなかったため、こうした話は意外にも彼を引きつけた。
「結構そういう話を聞く。例えば肝試しするときに霊感のある奴と行動すると、そのときだけ視えたりとかな」
「「へぇ~」」
佐伯の話に、秋斗と希は関心を示した。
一方春樹は
「まあいいですけど。それより佐伯さん、
正面に座る探偵は、秋斗の方を見て目を細めた。
「
一瞬ギクリとした秋斗だったが、すぐにいつもの調子を取り戻し、口角を上げた。
「小さいことは気にしないんじゃなかったんですか?」
人に言うな、とは言われていないし。
佐伯から言われた言葉をそのまま返すと、彼女は「うっ」と小さくうなった。
「まず、どこから話そうか……」
そう吐き出して目を
「じゃあヤク、自己紹介しろ」
指をパチンと一回鳴らす。
すると突然、佐伯の体の中から男性が現れた。長い髪を低い位置で一つに結び、和服を着ている。
霊、なのか?
秋斗は頭に疑問符を浮かべた。希もおそらく同じことを考えているだろう。普段秋斗たちが視ている霊はモノクロだが、目の前の男性にはちゃんと色がある。肌の色、髪の色、服の色、人間と変わらない姿だ。
男性はまず春樹の正面に立ち、顔をのぞき込んだ。春樹自身は視えないので、「ん?」と首を
次に彼は秋斗の前へと移動した。口が動いているからなにか言葉を発しているのだろうが、聞くことはできない。なにも反応を示せないでいると、男性はつまらなそうに秋斗から離れ、希の前にぬるりと立った。
「……はい、なんとなく」と、言葉を返す希。
「希、その人はなんて言ってんだ?」
秋斗が我慢できず
「『この娘は最初からオレの存在に気づいていたみたいだな』って言ってた」
希が通訳をすると、唯一視えていない春樹が「どんな人?」と続けて質問する。秋斗と希は「「長髪イケメン」」と口をそろえた。全く同じワードを口にした二人は顔を見合わせて笑う。
「へぇ~、見てみたいなぁ」
興味を示す春樹だが、全く視える気配がなさそうだ。
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