手が落ちるわけなどない
夕方。
家に着くとまだ誰もいなくて、うす暗い廊下には昼間の熱が残っていて、ムワッとしてた。まだ外は少し明るくて、僕は電気をつけず、洗面所へ向かう。
ウチの石鹸は泡のハンドソープで、押せばすぐにフワフワの泡が出る。白いそれを手にまとわせてこすり合わせると、今日は妙に心地よかった。指の間もしっかりこすった。頭の中をこすってるみたいだ
今日はちょっぴり嫌なことがあって。ホントなら、頭や手首もとれるのだけど。薬を飲んでるから、落ちることはない。
ただ、どうしようもないこともあって、今日はそんな気持ちだった。蛇口をひねって、流れる水に手を差し込む。いつもと同じぬるい水。ぬめりが落ちるのを感じながら、ぼんやりしていた。頭の奥がずんと痛んだ。
あぁ、手が落ちる。
そんなはずないのに、そう思った。ただ、そのときにはもう遅くて。
僕の両手は白く膨れた。まるで両手の甲にサンゴが生えたみたいに、手から骨が吹き出した。
さっきと変わらず、僕の手をつたうぬるい水。
それが妙に冷たく思えて、僕はぼんやり両手を見つめた。歪なそれに跳ねる水がピチャピチャと辺りを汚く濡らした。
骨が沸いて おくとりょう @n8osoeuta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます