第8話 断罪


「恐れながら陛下、この場をお借りしてよろしいでしょうか」


デリック王陛下は大きく頷かれた。失礼します、と殿下は陛下に頭を下げ、大勢の諸侯、令息令嬢に向け大音声だいおんじょうを発しました。


「諸君らに話すことがある。王都レノにはびこる諸悪の源はこの男、執政ゴドルフィン公爵である!」


殿下は、デリック王陛下の横に控えるゴドルフィン公を指差しました。


「この男はこの私を追い落とすためカッソと手を組んだ。このいくさはこの男が、バディス王をそそのかして始められたものだ。私が少ない将兵で戦地に向かわされたのも、物資が届かなかったのも、もちろん、この男の仕業。捕虜にしたバディス王がそう証言した。これ以上の証拠がどこにある。それだけでない。この男は私を追い落とし、嫡男ジョナスに我が妹カミラを嫁がせ、王位の簒奪さんだつを企てた。やつの所業は万死に値する」


殿下が近衛騎士に視線を送りました。近衛騎士は素早く動くとゴドルフィン公を拘束し、引き立てて行きます。会場にいるジョナスにも近衛騎士が集まっていました。横にいたエイミー・アシュトンは青ざめている。


そのエイミーに、殿下の視線が止まった。


「エイミー・アシュトン。我が妹を愚弄ぐろうする者。ジョナスが我が妹と婚約したというに貴様はなぜそこにいる。構わぬ。そいつも捕らえろ」


エイミーは近衛騎士に引っ立てられて行きました。全部ジョナスがやった、私は何にも知らない、と泣き叫んでいる。


やがて会場から二人の姿は消えました。殿下は今まで見せたことのない笑顔を私にお見せになられた。


「デネット嬢、仇はとったぞ」


そして、耳元で囁く。


「ダリルは見かけこそ悪いが大した男だぞ。いい旦那を貰ったな」

 

その言葉はダリルにも聞こえていたようです。小さい声で独り言のように言いました。


「そりゃぁ、どうぜ見かけは悪いですよ」


ダリルらしくない。何事にも動じないと思ってました。殿下が私の耳元で囁いたので妬いているのかしら。でも、殿下のおっしゃる通り確かに燕尾服は似合ってません。フクロウというより、どちらかというとペンギンです。


ダリルがねているので、ご機嫌直しに私はキスをして差し上げました。


パーティー会場に大歓声が沸き起こりました。私たち二人は皆に祝福されている。ダリルは大きな目をクリクリと回していました。


「さすがのダリル・オルグレンもデネット嬢には形無かたなしだな」


殿下も笑ってらっしゃる。フラフラとするダリル。


「ねぇダリル。あなたといると私は幸せ。私にとってあなたは最高の旦那様」






               《 了 》


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愚連隊の紅一点、私は婚約破棄された伯爵令嬢です! 皆のカタキは私のカタキでした 悟房 勢 @so6itscd

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