第27話
今まで婚約破棄イベントをこなさないと終われない、と頭から思い込んでいたけれど。
「直で言っちゃ駄目なのかな?」
考え込んでてついうっかりと、リュオディス殿下に『婚約破棄が』などと呟いてしまったあと、大慌てで誤魔化して全速力でその場から逃げ出した私だったけど──その時ふと、そんな考えが脳裏に浮かびあがってきたのだ。
そもそも私からして原作とは性格が違っているし。
ていうかなんならリュオディス殿下も性格が違うみたいだし。
原作ゲームを序盤しかプレイしてない私だけれど、それでもすぐ原作との違いがわかるくらいなのだ。
ていうか、ゲームをプレイした人ならそれ以外にも色々、元の話との相違点が解るんではなかろうか??
「だったら直接、婚約破棄を申し出るのもありなのでは?」
これは試してみる可能性はある、と私は思った。幸い、今の殿下は気性が穏やかでとても優しい。このくらいの我儘なら、試しに話してみても怒ったりしないんじゃないだろうか。──しかし、
「う~ん……まずは相談してみるか…」
殿下は怒らないだろうが、立場的な問題も色々あるのだ。そもそも、位が下の公爵家から最上位の王家に対して婚約破棄など、申し入れるなど非常識を通り越して無礼極まりない。なにせ、下手したら公爵家のお取りつぶしだって有り得る世界なのだ。
慎重に事をすすめなければならない。
思い付きで行動しなかった自分を褒めつつ、私は、家へ帰ってからミィナに相談してみることにした。
「駄目に決まっているでしょう……」
「あ、やっぱり?」
答えは想像通りだった。つーか、ミィナから思いっきり、可哀想なものを見る目で見られたわよ。
「当たり前でしょう…お相手はこの国一の権力者なんですよ?解ってます??」
「はい……解ってます」
「そんなお相手を前に、婚約破棄して!!なんて、幼稚な子供じゃあるまいし、言えるものですかって…」
「はぁ…………」
主人に対して失礼じゃない??なんて軽く思いつつも、私は私を諫めてくれるミィナに一応の感謝はした。
「うーん…直接は駄目かぁ……残念。でも、ありがとうね、ミィナ」
「いいえ。こんな大事なこと、事前に相談してくれて助かります」
「あはは………」
そうすると、リュオディス殿下に『婚約破棄』の呟きを聞かれたのは、我ながら痛い失敗だったけども。まあ、こんなホントにただの思い付きで、一生をふいにする気はないので、今回のはただの独り言っつーことで無理矢理通そう。うん。
でも、もしも出来ることなら私のあの呟きで何かを察して、殿下の方から言ってきてくんないものかしら??なんて、都合の良すぎることを密かに願う私だった。
「次の手を考えなきゃなんないけど…」
何も思いつかなかったので、私はタマに添い寝して貰って、その日は気持ち良いくらいに爆睡した。
すると翌朝、事態は突然、動きを見せたのである。
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