第80話 休憩④


 ワインはほとんど俺が飲んだ……。俺が説明をすると2人は純粋な面持ちで耳を傾ける。こんなこわもて2人がまるで子供のように基本的な事を聞いて来たり、納得する顔がなんだか愛らしい。そしてワインを一口すする。美味……。


 いつの間にか酔いが回ったのだろうか、気持ちいい気分がややだるくなり始めた時だった。確か……男はいったん部屋に戻ると言っただろうか。女性との話が進んであまり聞いていなかった。


 ワインの瓶は空になっていて、少し残っていたグラスをすする。いい香りが強くなる。話をしている間に女性との距離が段々と近くなっていく。だるい気分が消え去って今度は体が熱くなってくる。とくに中心部に血液が貯まる。今日はうるさいミラクルもいない。……ミラクルがいない!? そういえば、この部屋に入ってからほとんどBrynkが機能していない。少しの間だけ滞在する予定だったので気にしていなかったが、酔いのせいもあるのか意識が定まらない。


 正直、今はそんな些細なことなどどうでもいい。ぐるぐる回る頭が、目の前の大きな胸に焦点があう。いつの間に酔いが回ったのか、女性も顔を赤くして体が熱くなっているようだった。胸元がさらにはだけていく……。


 胸の刺青が奥まで見えてバラの刺青だったと分かった。脇の方にかけていばらが伸びていき、きれいに膨らんだ乳房の下部にバラが咲いていた。下着は着けていなかった。そのまま、彼女は肩からジャケットが滑り落とすと、俺の頭を押さえ胸へと押し付ける。温かくいい香りがした。おっぱいを吸う。彼女は軽く声を出し背に力を入れた。俺はいばらに沿って横腹を撫でる。


 いつの間にか俺の服を脱がされ、2人は裸で抱き合っていた。キスと愛撫を繰り返し、ベッドが乱れ、テーブルを蹴りガラスや瓶が割れる音がする。とうとう彼女の中に入る時が来た。意識が朦朧としているが強い快楽が全身を襲う。まるでその夜は現実と幻が交差しているかのようであった。長い夜の間お互い夢中で求め合った……。











 

 

 ……頭が痛い。


 記憶が薄く定まらないが、強い快楽の余韻だけは体にはっきりと残っている。


 朧げな視界に、男が椅子に座っているのが見えた。乱れたベッドの上にいる、裸の俺をにらんでいる。ハッとして醒めていない頭を必死に回転させ、今の状況を考える。女は? ここはどこだ!?


「おい、おまえ。俺の女に何しやがった!」

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