第59話 会議への招集


 マリをホールに残して、残りの寄せ集めメンバーを招集しに行く。

 

 まずは魔法使いの2人からだ。ドアの前でノックをする。


 ……返事がない。


 さらに強くノックをするが……返事は無い。


 こういう場合はどうすればいいのだろうか。無理にドアを開けるか、いやそれは流石に失礼か。集中して学問や魔術の研究をしている可能性もある。


 いやいや、ノックをわざと無視しているのかもしれない。こんな初っ端から下に見られたらこれからの自分の威厳に傷がつく。


『マスター頑張ってください。あと、傷の付く威厳なんてあったんですね。ぷぷっ』と笑っている。


 ああ、俺ってAIこいつにも馬鹿にされているんだな。泣きそうになってくる。


 意を決してドアを無理やり開ける。


 ……だが、ドアが開かない。鍵など無いはずだが、魔法か何かでロックしたのだろうか。……もういいや。あとで連絡だけしよう。あの時の老人のセリフの後もテワオルデはなにも反応してなかったし……、拒否もしてなかった。


 この2人は会議に出なくもいい人なんだ。ーーそうだ、テワオルデならどうするかを考えながら行動すればいい。落ち着いて。深呼吸をしよう。


 そして、次は大部屋に入った。


 5人のメンバーがそれぞれに寝転んで休んでいる。


 肩を落とす。なぜこうもみんな緊張感が無いのだろう。


 だが、それにしても無防備な格好をしている。シャワーを浴びたばかりって、なぜこんなに艶っぽいのだろうか。服も戦闘用から家着のようなものに変わっている。あまりにも軽装すぎて、目のやり場に困る。ヘルドなんて下半身は薄い色のタイツだけだぞ。


『何を考えているのですか、マスター? こんな状況でもよくそんな破廉恥なことを想像する余裕がありますね』


 ――うるさい。男のさがだ。


 なるべく、彼女達の姿格好は気にせず、全員を起こす。


「みんな! シャワーが終わったら一階で集合って言ったよね。すぐに会議を始めるから、もう少し服装を整えてから下に集合!」声を大きくして言った。


 ……が、反応は薄い。


 琉球畳に寝転んだり座っている5人は、姿勢を変えずに視線だけこちらに向ける。


 下半身タイツのヘルドは「ごめん、パスで」と言う。

 黒い長髪を乾かしているヒメカダイラスは「お前が勝手に決めろよ」と言葉が悪い。

「うちらが納得しない限り動かないけどな」とシンは嘲笑する。

「どメルンチ!」とパラスパラスは相変わらず、何を言っているのかさえ分からない。


 全く言うことを聞いてくれない。シャンプーの香りの中、無防備な姿の美女たちを見て、このパーティーは意外と良いかもと、鼻を伸ばした俺が馬鹿だった。


「だるい、パス」と、じっとりとした目のリリフィアはその視線を動かすことすらせずに、手で払うジェスチャーをした。


 怒りで手が震える。

 

「おい! いい加減にしろよ。お前たちの惑星外への脱出を手伝うと言ってるんだ。こんなやる気がないバカなら、もう俺は手伝わないぞ! お前もだリリフィア。本当に何もしないって言うのなら移動兵機ここから落として捨ててやる。もう数合わせはいらないからな」と、手を震わせながら声を張る。


「お前、それはひどいだろ」と、ヘルドは少し慌てて上体を起こす。ウエノの体が怒りで震えているのを見てため息をつく。


「はあ、仕方がないな、お前ら行くぞ」

「えー、面倒なのはこいつに全部任せりゃいいんだよ」

「震えてる。マジウケるぞ、ウエポン」

「ダメリーダーだとしんどいな」と、好き勝手言いながらダルそうに立ち上がる。


 リリフィアもそれを見て仕方がなさそうに立ち上がる。

 

 俺は足音を立てながらホールへと歩く。頭の中は苛立ちでいっぱいだった。これからみんなで協力し合わなければならないのに、なんでこんな頭のおかしい、役立たずばかりなんだ。


『マスター落ち着いてください。リーダーとしての器が足りませんよ』


 ――うるさい! お前も役立たずなんだよ!

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