第55話 失言


「お、お前ら……」


「ハロー♪」

「ウィーす!」

「おっはー」

「パロピロン♪」

 

 と、軽い挨拶が飛んでくる。戦闘の意思は感じられないが、昨日の戦闘の直後だ。一切油断は出来ない。


「おー怖い顔してるな。やめてくれよ、こんなところで戦闘する気か?」と黒髪のロングヘアの女性が笑顔で話すが、目に笑いがない。

 

「周りにいっぱい人が居るよ。こんなところで戦ってどのくらい人が巻き込まれて死ぬのかな〜」

 

「やるんかよん、マジびちだんぽん」とピンクケナモンが、こっちに指を挿して何かを言っている。


「お前ら、脅しているのか?」


「そんなわけないじゃん。俺らはもう辞めたんだよ。お前のいう通りにな」

「またあんな戦闘したらこっちの体がもたねぇからな」と黒髪ロングの女性が、頭に手を組んでだるそうに話す。

「お前、この惑星から出ていけと言ったじゃねぇか」と身長の高い褐色女性が威圧をかけてくる。思わず生返事で返す。


「おおぅ」


「だから惑星から出る準備ができたんだ」とリーダーぽい金髪の女性が話しかける。


「おおぅ」


「”おおぅ”じゃなくてよ、出来たって言ってんだ」


「おおぅ」


「舐めてんのかテメェ」と、いきなり隣にいた褐色女性が胸倉を掴む。


 周りがざわざわし始めた。


「やめな、シン」

「ああ」と言ってシンと呼ばれた女性が手を下ろす。

 

「いきなり何を」と、俺は咳き込みながら話す。


「だから早く惑星から俺たちを出せって言ってんだ」


「俺に惑星の外に連れ出せって? そんなこと言われても、どうやって惑星から出せばいいのか分からない」

 

 するとその光景を見守っていたミラクルが助言する。

 

『マスター、あまり挑発に乗らない方がいいです。ここで争い事をすれば、移動兵機は得られなくなります。それにこの惑星からは簡単に外には出られません。彼女達はただ鬱憤を晴らしたいだけです。とにかく興奮させないよう、できるだけ静かに対応してください』


「だから責任を取ってもらう」

「俺たちだってお前の約束を守ってるんだからな」

「デコピンまじ!」


「分かった。何とかするよ。でもすぐには無理だから……」と考え込む。


 ……そうだ。


「助ける代わりに超獣モンスターに協力してもらう」と、つい勢いで言ってしまった。


「ウエノ様、彼女らに協力を仰ぐと言うのですか?」とテワオルデが慌てて聞いてくる。


「え、ええ。まずかったですか?」


 テワオルデは何も言わずに首を振った。


『死んだ。こいつ本当にやってしまった』

 ――なんだよ! ミラクルも否定するのか。とっさに言葉が出たんだから仕方がないだろう? どうせ俺たちに協力なんてしないだろうし、それに、他にこの場をしのぐ方法があるのか?


『たくさんありましたよ。普通に。なぜいつも最悪な決断ばかりするのですか?』


 ――なら言えよ! 何も言ってくれないからつい言ってしまったじゃないか。


『ミラクルは、質問されないと何も答えられません』


 いつも、くだらないことばかり勝手に話しかけてくるのに、こういう時の言い訳だけは一丁前だ。本当に使えない。


 突然の頭痛に襲われたが、もう慣れてきたので無視をして、彼女たちに”やっぱり協力は必要ない”と、言い直そうとした時……。


「仕方がないな。まあ、俺らもお前に一度は負けたんだ。仕方がない。従おう」となぜか急に懐柔される黒髪ロング。

「その代わり、しっかりと責任は取ってもらうからな。協力まで言われたらこちらも引けないから」

「いいじゃねぇか、やってやるよ」

「やっばグリン!」


 と、4人が口を揃えて、なぜか協力に前向きだ。


「まあ、無理して付いて来なくてもいいよ。惑星から出る方法は後で考えるから……。では、また後で」と椅子から立ち上がる。


 どうにかして、彼女たちから離れたい。


「さて、帰ろうか」と、2人に言って何気なく立ち去ろうとすると、目の前にハンターキラー4人が立ちはだかる。そして、手を差し出している。握手を求めているつもりなのだろうか。


 その差し出された手を、パンっと払うわけにもいかず。仕方がなく目を合わせずに握手をして、しれっと早足で出口に向かう。


 紹介所から出て数歩歩く。後ろを振り返らなくてもはっきりと分かる。彼女たちはついてきている。


 そして、どうせ無駄だと分かっていながらも、彼女たちから離れようと早足になる。その時、後ろから声が聞こえてきた。

 

「これからどうするんだウエノ?」

「おーいリーダーさんよ、何か説明してくれ」

「マジ、バイクれるでん」


 いつの間にかリーダーとか言われてるし。マリとテワオルデも、俺にプランがあると思っているのか無言でついてきている。


 袋小路な状況になってしまった。


 ――ミラクル様どうしましょう。何か助言をお願いします。


『今更どうしようもないですよ。全てマスターのミスです。常に狙われるリスクを受け入れつつ、彼女たちと協力するしかないでしょう。テワオルデとマリにもしっかり説明をしてください』


 仕方がない。


「では、君たち4名が俺たちのパーティーに入るということでいいんだな! さあ、君たちの望むものへとつながる旅が、今始まりだ!」


「お、おう……」


 かくして7人の凸凹パーティーは完成したが……これから先、一体どうすりゃいいんだ。

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