第54話 案内所ふたたび


 次の日になっても、傷は完全には癒えなかった。テワオルデも体のあちこちの傷を、特殊なテープで塞いでいる。


 昨夜、輸血も兼ねた点滴をした。簡単な医療処置はハンターにとって必須である。俺もミラクルと揉めながら、何とかうまく自己処置をした。


 前回とは別の紹介所へと向かう。マリは相変わらず無口で無愛想だが、やっぱりついてくる。テワオルデはいつも通り説明が上手で、話が弾む。


「以前伝えた通り、移動兵機のレンタルが必要です。実は、この近くに生産施設ダンジョンがあります。しかし、そこはクラスAです。そこまでの距離は200km程ですが、攻略は無理です」


「なるほど惑星に点在しているということは、それくらいの距離があるんですね」


「そうなのです。この大陸にはあと2つダンジョンがあります。1つは南側300kmにクラスCのダンジョンがあります。だが、それよりももう1つ、攻略が進んでいる北側に行くといいでしょう。距離は2000km離れていますが」


「2000km! 俺はテワオルデさんに任せます」


「分かりました。それではまとめます。ここの大陸空の城塞セメラクサンは4つのダンジョンがあります。そして、ここから北へ約2000kmに天の体川セレスティアルフローが流れている。まず、その付近にあるクラスCのダンジョンを落としましょう。そして、そのまま天の体川セレスティアルフローの流れに沿って西の大陸に向かいましょう。大陸を隔てて、天の体川セレスティアルフロー沿いにはダンジョンが密集しております」


「了解です。ですが、そんな遠くにどうやって行けるんですか?」


「この惑星では、飛行タイプの乗り物の使用が軍以外には制限されています。ですので、一番安全で確実な乗り物は移動兵機です。速度は最大で時速120kmまで出せて、重力子機関なので、ほぼ半永久的に走行可能です。運転を代わりながら昼夜問わず移動すれば、1日で目的に到着できる計算となります」


「そんな便利なものがあるんですね。是非利用したいのですが、もうお金は残っていないですよね」


「無償で貸してもらえるんですよ。ただ……」


「ただ……?」


「移動兵機での移動中、超獣モンスターと遭遇すると自動的に機体が停止する仕組みになっています。そして、そのモンスターを倒すまで動き出しません。つまり、モンスターを倒しながら進むというのが条件なんですよ」


「なるほど、でもそれなら、お金も貯まるし経験も積める、一石三鳥です!」


「まあ、良い方に捉えるとそうですね」とテワオルデは笑った。


 話をしながら歩いていると、紹介所はもう目の前にあった。


 その広い建物の中には、100人以上のハンター達がおり、混雑していた。受付を終え、3人は座って募集の内容をBrynkで確認しながら話していた。


「こんなにたくさんハンターがいれば、すぐにパーティーの仲間が集まりそうですね」


「色々と条件を設定したので、簡単にはいかないかもしれません。このような場所でのパーティー集めは、なかなか条件と目的が合わないものなのです」


「そんなものなのですか」と納得し、周りを見渡す。歴戦の戦士のような風貌の人や、大きな剣を持つ女性とさまざまなハンターがいる。そして、大きなマシンガンを持つ肌の色が濃いグラマラスな女性…………!!!


 視線をすぐに逸らした。見てはいけないものを見てしまった。緊張が走る。テワオルデもその気配に気が付いてか、身構えている様子だ。


 そして、もう一度視線を移すと、そこには4人組の女性パーティーがいた。彼女たち4人は、俺たちと同様に、傷消し用テープを体のあちこちに巻いている。


 間違いない、昨日のハンターキラー4名だ。


 彼女たちはまっすぐこちらに歩いてくる。剣に手を伸ばす。テワオルデは顔を横に振るう。ここではそんなことをしてはいけない、という意味だろうか。マリはそれに気がついているのか不明だが、いつものように無関心な様子を見せている。


 4人は変わらずまっすぐとこちらに向かってくる。目を離すことはもはやできない。彼女たちは確実に俺たちに向かって来ている。


 そして、目の前までやって来た。

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