第48話 ホテル


 2人で息を切らしている間を割いて、テワオルデは「そろそろよしなさい」と言う。


 そして、「闇討ちをされたらたまりません。傷もありますので今日はこの街で一泊しましょう」と続けた。



 一番大きなホテルに行く。すごい! この惑星がローテクノロジーな様子なので忘れていたが、ホテルの内装は未来的で、美しかった。マリも銀色の瞳を輝かせて喜んでいる。

 

 お金を払った。この惑星にのみある通貨だ。


「通貨なんてあったのですね」


「ここの惑星は異邦者も多いですから、通貨が単純で分かりやすいのです。この惑星から出るときはBrynkの価値に記憶されます」


 自分の住んでいる過去は通貨というものを使っていたが、この未来の世界ではBrynkを介して記憶媒体でその人の価値というものに付与される。例えば食事を購入したりホテルに泊まってもその価値が下がることはない。だが素行が悪ければその価値は下がっていく。その個人の能力が上がると価値は上がる。そして、この宇宙ではどんな人でも普通に生活するだけの価値を最初から与えられて生まれてくる。


 宇宙戦争が始まり45年以上経って、その常識も壊れつつあるが。


「モンスターを倒したという情報は残っていますか?」と問われる。


 以前モンスターを倒した時を思い出す。光の玉のようなものがBrynkデバイス上にある宝箱のアイコンに入っていった。

 

「あの右上の宝箱のアイコンですか?」Brynk情報を見ると2匹撃破としるされている。


「それを交換所でお金に変えることができます。今日は私のおごりでいいですよ。ただ私も今回でお金が尽きてしまうので明日から無一文になりますけどね」と言い笑った。


「ははは……」笑えないけど、お愛想をした。


 さて、部屋は広めのベッド2つがあり、高い階層で窓から見る風景は絶景だった。お金を高く払い高階層を選んだ理由は、この世界、この街を見てほしいからなのか。


 夕暮れの斜陽が美しくこの街を照らしている。


 高所から望むこの街は美しいと思う反面、たくさんの問題を抱えていると分かる。スラムのような荒れたエリアや、人同士が争っているのも見える。


 Brynkデバイスを介してその人の本質となる価値を重視せずに、通貨という一過性の価値を大切にする怖さが出ている。お金さえあれば、陰で何をしても許されるのだ。犯罪行為も普通ならBrynkによって制されているはずなんだが、この惑星は本当に独特だ。


 さて、と部屋の中に視線を移す。テワオルデさんはベッドに座り、何やらBrynkで調べているようだ。マリはもう1つのベッドにまた大量にぬいぐるみを置いている。はあ……とため息をつく。


 ん? 俺のベッドが無い。


 マリは子供料金なのでベッドはつかないらしい。じゃあ床で寝ろ。とも言えず。一度、マリと一緒のベッドに入ったが目が怖いのでやめた。いつも通り壁に寄りかかり魔弾をマガジンベルトに詰める作業をした。


 ミラクルはいつものようにご機嫌で歌を唄っている。

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