第5話 想い

 数週間が経ち、体調はすっかりと良くなった。食事は流動食のようなものばかりで、味は特になく正直まずいが、それを除けば生活に不満はなかった。


 ある日、施設の中で新しい担当者、先生に質問を投げかけた。「ここはどこなんですか?」

 

 先生はやさしく答えた。「ここは平和区にある、とても頑丈に警備されている施設ですよ」


 何故かその時、焦燥感に駆られ「外を見てみたいのですが」と、口にした。


 実際のところ、心の奥底では、リラリースに再び会いたいという強い想いが渦巻いていた。彼女が自分の担当から外されたと知ったのは、先日の戦争の現実を知らされた次の日だった。


 この全く違う世界では、自分の周りは何もかもが新しく、そして異質に感じた。単に担当者が変わっただけ、そんなことで何が変わるというのだろうか。でも、次の日から、彼女のことを考えずにはいられなかった。


 知り合いも家族も居ない、この世界に生まれつき、冷凍装置を解凍され、最初にあったのがリラリースであった。彼女に対するこの感情、優しさはまるで母親から受ける無償の愛のようであった。


 しかし、彼女に対して抱くこの感情は、それだけではない。もっと深く、心の底から湧き上がるような温かさを僕は感じていた。

 

 もちろん先生はそんな心の内情など知らずに、頷きながら言った。「はい、もう少しの間、待ってください。最初は制限がありますが、そのうち一般の方々と同じように自由に行動できるようになりますよ」


 それを聞き、考え込む。「一般人と同じくか……。僕は特別な存在なのかな」と、つい呟く。


 先生は微笑みながら答えた。「そうですね、あなたは特別かもしれませんし。あるいは、他の人たちと何も変わらないかもしれませんね」


 僕はうなずいたが、その深い意味のありそうな答えに、少しの戸惑いを感じていた。

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