第3話 リラリース
僕はウエノ・ミライ27歳。冷凍装置で未来に来た、唯一の過去人である。
一週間ほどベッドで横たわりながら、過去から現在までの話を聞いた。自分が冷凍装置に入っていた350年間の空白を埋めるような形で歴史の授業を受けることとなった。
「まず覚えてほしいのが今の状況なの」彼女は最初に優しく声をかけてくれたリラリース。解凍されてから一週間の間、僕に付き添い、話をしてくれている。体の状況が良くなってから、徐々に彼女の優しさに惹かれていった。
「現在の状況ですね」と答えた。隣に椅子が置かれて、そこにリラリースは座っていた。
つい彼女を見つめてしまう。その髪はルビーの様な赤色で、しなやかに彼女の背中まで優雅に流れていた。顔立ちは彫刻のように洗練されており、その肌は新雪のように真っ白で、わずかに色気を欠いたその白さが、どこか不健康さを匂わせているかもしれない。しかし、それすらも彼女の美しさを引き立て、独特の魅力を放っていた。
彼女の顔は無表情で、感情を読み取ることは難しかった。しかし、彼女の瞳は深い海を思わせる静かな碧色で、誰もがその底に何があるのかを知りたくなるような謎めいた魅力を持っていた。
当初は細過ぎると感じていた腕や腰も、実は軍人として鍛えられており引き締まった筋肉であるのが分かる。その全てが彼女の独特の美しさを持っているように感じた。
彼女の正式な名前はリラリース・響綾・アントワネル・ヴォン・アデライデ・ラ・クレールと言うらしい。覚えなければ怒られるだろうか。
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