Episode 143 これで同じ。


 ――そこから一歩を踏み出すのなら。それはきっと、一歩前進だから。



 アトリエの中では、自然体。……きっとそれが、葉月はづきの求めていたことと思うから。


 三人が、漸く同じスタイル。一糸まとわず、包み隠さずに、その世界を創り上げた。


 そして初めて見る……


「ちょ、そんなにジーッと見ないで」


 と、茹でた蛸のように、糸子いとこのお顔は真っ赤だった。


 スタイルも、それに眼鏡を外したお顔だって……いや眼鏡を外したからこそ、今まで気付かなかった素顔を見ることができた。所々、白い線が見えるけど……


「本当に良かったのかな? 私みたいなのがモデルで」


 と、糸子はスッと目を逸らして言った。白い線は古傷。……過去に何かあるのは、

誰も同じ。だからこそ、触れることはないの。私も葉月だって思いは同じだ。


「うん、君だから、そらと一緒に描きたい」

 と、葉月は言う。満々な笑みを浮かべ、迎え入れるように。


「でも大丈夫なの? 構図だってあったんじゃない? 急に変わっちゃうから、描き直しとか……」と、糸子は言うも、クスッと葉月は笑いもって「全然、問題ないよ。描き直しなんて日常茶飯事だから。描きたい絵や、絵が良くなるなら、臨むところだよ」と。


「じゃあ……」


「うん、ファインプレーだったよ、空。ありがとね」

 と、葉月は大喜び。


 糸子も今日からはモデルになる。素の糸子を見るのは、今この時だと思える。


 そしてキラキラ輝く雪……


 広がるビッグな窓。アトリエの扉の向こうに見えるものは、お外の景色。深々と降る雪たち。降る雪に、糸子は大燥いだ。その瞬間を逃さず、葉月は描く。私も糸子も戯れるのだ。お外からは見えない、マジックミラーの大きな窓が特徴のアトリエの中で。



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