第二十九章 シンセンなこと。

Episode 141 新しい何か。


 ――あの日あの時、葉月は謎めいた言葉を残していた。しかも、私を通して。



 降り積もる雪の影響もあって、向こう側が見えないのと同じ感覚。その寒波の中を、私たちは今日も行く。皆が集う学園へ。ミシミシと音を立てる雪の道。


 道路と歩道の区別もつかない程に、白銀の世界。


 この辺では、かなり珍しいことで、ある意味では大はしゃぎな、登校する生徒たちの風景。車を推している人たちも見かける程、積もり具合は、昔を彷彿とさせたの。


 私にとっては、あまり珍しくはないのだけれど、


「わーい!」と歓声を上げる程に大はしゃぎな人が約一名。私は半ば他人のフリで……


「ちょっとそら、何避けてんの?」


 と、糸子いとこが訊いてくるから、私は少し……多分だけど、お顔を真っ赤にしながら、


「座席、ちゃんと座ろ。皆見てるし、雪が珍しいのはわかるけど」と、囁くように。


 その直後、ササッと座り直す糸子。キョロキョロと、辺りを見ながら。乗車人数は少ないのだけど、小学生の子がジッと見ていることもあって、それが、心の中では多分、


(僕らより子供……)と、そんな視線に思えたから。


 朝の、電車での出来事。その一幕に過ぎなかった。


 電車を降りてから、私たちは歩く。そこでも同じ。広大な白銀の世界。


 二人きりだったけど、いつしか普通の光景へと誘われる。普段お顔を合わせる人たちが次々と。中には声を掛けたことのない人々……でも大半が、やはりまだなの。名前を知らない人々ばかり。だけどその中で、サーッと背後から現れる人も知らない人が殆ど。


 それでも感じる、視線。


 ずっとついてきているのがわかる。何処からかは謎だけど、少なくとも、背後に気配を感じる。やはり同じだ。以前から感じている気配は何者なの。そう思える程に心配。


 暫く歩く。


 積雪も何のそのって感じで、学園に入るまでは、至る春までに答えが出ただろうか。



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