Episode 140 キラキラ煌めく雪の結晶。


 ――扉の向こうは、大自然と戯れる場所のように、とてもリラックスな世界観。



 そして始まったの。私をモデルとした、葉月はづきの絵画制作。大きなキャンバスに描かれてゆく。いつからこの様な仲になったのだろう? と思える程に、実は裸のお付き合い。


 何故か不思議なの。


 包み隠さず裸なのに、割と普通というのか、ごく自然? それは、もしかするなら、


「そうだね、このアトリエの秘密でもあるから」と、葉月は答える。そして「鋭いね。それに、いきなりヌードで良かった。思った通り、引き締まった肉体。髪も下ろしてもらって正解だったし、ナチュラルが一番似合ってる。ほら、雪。見てごらん」とも言った。


 見るの、窓から。……一面ガラス張り? お外にいる感じ。


 雪と戯れる。すると葉月は「思った通り、いい絵になるよ」


 このアトリエには三人。……私と葉月、そして糸子いとこがいる。モデルと描く人、見学する人という関係。片隅で畳まれている制服と下着を含むのが二人分。見学する人は、制服を着ているという構図。女の子同士だけど、糸子に裸を見せるのは初めてのことで、


そらって、こんな表情見せるんだ……」


 との呟き。そこから想像するに、驚いているという表現が近い。だから包み隠さず、裸の私なのだ。このことは、あの日の答えとも言えると、私はそう思うの。だから、


「お友達だから、全部見せてるの。ごっこじゃないお友達だから、これからもね」

 と、自然と出た台詞。クスッ……と、笑みを見せる糸子は、


「そんなの決まってる。裏表のない子ね、ホントに。ドミノに一番向かないタイプだけどね、そんな空が大好きだから……それはドミノがエックスになっても変わらない」

 と、言ったのだ。


 キラキラ舞う雪。その向こうにはもう何かが始まっているのだ。筆を執る葉月は、


「何かが始まろうとしてるね、空を通して新たな何かが……」

 と、深々と降り積もる過程の中で、葉月はそっと言ったの。今はわからなくても。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る