Episode 139 包み隠さずに有りの侭で。
――その世界は広がる。この扉の向こうだ。すると、ポンポンと叩かれる肩。
振り返ると、
「来たね」と、一言。
「ま、入るんでしょ。ということはOKなんだね、モデルの件」と、訊いてきたの。
「まあ、興味があったし……」と、囁くような返事となったけれど、
「その子は?」「見学したいって。私の大親友だから」と言った直後、葉月はじっと食い入るように見たの、糸子のことを。制服の上からでも、穴が開きそうなくらい……
或いは溶けそうな程かな? するとフムフムと、頷きながら「成程ねえ」と聞こえるか聞こえないかの、それこそ囁くような声を発してから、葉月はニンマリとして、
「じっくり見学しててね。わかるよ、君も同じなんだ。空に興味があるんだね」
と、喜びの声に近いような感じだった。
そして距離感も近い。糸子とほぼ密着するくらいに、お顔を近づけているの。
「あ、あの……」
「君は?」「
肩ではなく、今度は背中を叩いた。
「ちょ、最初から……なの?」と、お顔が熱を帯びるのを感じながら訊いたの。
「そうだよ、最初から。アトリエに入ったら全部ね。僕も同じだから。見てるのは糸子だけだし、大親友なら全部見られても問題ないでしょ。それを彼女は求めてるの」
雪なら意図も簡単に溶ける程、間違いなく赤くなったお顔。多分全身にまで……
「なら、全部見て。私という女の子を。
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