Episode 104 噂をすれば影が差すので。


 ――お姉ちゃんと二人きりの部室。思えば初めての光景だった。



 学園のクラブ。お姉ちゃんは何処にも所属してない。今もそう。所属しているといえば唯一ドミノだけ。中学生の頃は関西を代表するような大会に出場する程の水泳部の選手。


 ……だったのに、学園に水泳部はあるのだけど……


「ま、人其々ってこと。私のしたいことは、そこになかっただけ。それよりも、噂をすれば何とやらよ」と、お姉ちゃんの言葉の後、コツコツと……足音がリズミカルに響いた。


 まるでタップダンス? この場所なら実現できそうな床の作り。芸術棟は、やはり不思議の宝庫。七不思議の七倍程に謎を秘めているの。それはここの主も知らない領域。


 そんな思考の最中で近づく、陸君りっくん


 噂の張本人が現れた……ということなの、お姉ちゃんの言う通りなら。


そら、ちょっと付き合ってくれないか?」

 と、そっと私の手を握る陸君。突然のことなので「何何何?」と連呼する疑問符。


「行っといで。戸締りとかしとくから。じゃ、ごゆっくり、お二人様」と、お姉ちゃんは手を振る。しっかりと見送っていたの。陸君に手を引っ張られる私が、視界から消えるまでの一部始終。そこからは、もうロマン深き夕映えのステージ。影が二つ、舗道に。


 陸君が何処へ向かうのか? 今はまだ未知の世界。


 帰り道に似た道程だけど、そこからは広がる未知。大阪から繋がる線路は幾通りも。中には摩訶不思議な世界に至るまで幾通りにも自在に変化。万華鏡のように広がるの。


 繋がるのは環状線。内回りと外回りが正転逆転の関係にある。Nゲージなら電極が反対になるレール。車両に搭載されているモーターは、それに従って動いている。錯覚を起こす程、模型の世界が等身大で体験できる、そんなコース。そう思うのは私だけかな?


 でもでも、それは序の口。


 陸君が行きたい場所。私と一緒に行きたい場所は、もっと奥深くメルヘンの世界。


 ドリーム・シティという呼び名の大きな遊園地だ。イベントも豊富に含んでいる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る