Episode 103 物静かな部室は姉妹の憩。


 ――喩えるならモノトーン。それは今いる場所。そして静かな部室の色。



 飾られる北陸旅情の写真たちは、今も健在。ターニングポイントからの私のルーツを物語として表現している。私のキラキラが誕生した頃の物語だ。


 その裏側では、とあるイベントがあった。それこそがスタンプラリーだった。私には相棒がいる。……もう相棒ではなく特別な人。真夜中に脱いだものは衣服だけじゃないの。


「本当の、裸の私……かな?」


 ヌッと近づく顔。ヌワッと短い悲鳴を上げる私。


「お姉ちゃん、いつからいたの?」


 気配を感じなかった。ヌッと私の横顔に、お姉ちゃんのお顔が現れて初めて気付いた。


「心ここに非ずね、余韻に浸ってた?」


「何が言いたいの?」「深夜の情事。そらの顔に書いてあるから」と言って、お姉ちゃんは私の前に立った。向かい合わせ。そして「図星ね……というよりも聞こえちゃってた。あなたたちの物音。話し声も、それから……」「わわっ、ストップ、ストップ」と塞いだ。


 それ以上は、あまりにも。火事場の馬鹿力的な勢いだったから、恥ずかし過ぎて……


「羨ましい」とポツリ、お姉ちゃんが零した。「へ?」と、間抜けな声の私。


「ずっといるに決まってるだろ。と言ってくれる騎士ナイトさん。そうそういないよ? 心配ないない。陸君りっくんはずっといるよ、あなたの傍に。それが証拠に、とある情報網から入手してね、さっき。春美はるみさんね、病院近くにお家があるんだけれど、そこに御主人様や娘さんを迎え入れるって言ってた。そして陸君も一緒にね。それなら、どお? 二つ叶うよ……」


 空は、ずっと陸君と一緒。


 陸君は、念願の家族が揃った暮らし。幼い日からの願望。そして春日はるかさんも、この学園に転校してくると。元々私学の学園に通っていた子だから、転校扱いだそうなの。それからそれから最大の原因は、御主人様の出世。大阪に新しくできた営業所への転勤。そこの所長となったから。……きっと、バラバラだった家族が修正した姿。陸君の願いだった。



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