Episode 098 編み棒の行く先。


 ――規則正しい縦と横。少し未来のXマスを目指して紡ぐ想いの数々。



 三人が三人とも贈りたい人がいる。ウメチカさんは太郎たろうさん。お姉ちゃんは佐助さすけ君。そして私……やっぱり陸君りっくん。そのためにも願う。陸君と春美はるみさんが家族になる日を……


 病室では、子と母が再会した物語が紡がれている。


 きっとそう。長い空白の……ではなく陸君にとっては初めての出会い。父との再会もこの間のこと。陸君は本当の家族と出会えたことで、いっぱいいっぱい。


 春日はるかさんも入れて四人家族となった日は、盛大な喜びがお空高くに。


 三人並んで一緒に……

 編み物に勤しんで、陸君の笑顔を思い浮かべていた。


 その前に、ウメチカさんは初めてだったの、私のお家を訪ねたこと。そして、お姉ちゃんのお部屋にいる。ウメチカさんが興味を抱いたもの、それはぬいぐるみだった……


 共通点は大いにあるの。


 そのぬいぐるみは、エブリアニメのグッズたちだから。驚かれたのは、それらが手作りだったこと。揃うボビンに、手芸の材料。ミシンもある。自己主張の強いアピールだ。


千佳ちか、よっぽど気に入ったようね。……欲しい?」


 と、お姉ちゃんが訊くほど釘付けになった、その中でも大きなぬいぐるみ。……コクリと頷くウメチカさんは、お顔を少し赤くして、ドキッとするほど可愛らしかった……


「そんなに、だったの? わかった。プレゼントしてあげる。そ、その代わり、また明日も行くよ、りくのお見舞い。あなたが言い出しっぺだったんだから、責任はとってね?」


 と、お姉ちゃんは面白い表情をして、そのぬいぐるみをウメチカさんへ、プレゼントしたの。するとね、ウメチカさんは「わーい、ありがと」と、満面な笑みを見せた……


 ぬいぐるみを抱えながら。


 私は思う。陸君もまた、同じような無邪気な一面。お母さんとの語らいが脳内に浮かんできた。病院では親子水入らずの、言葉にできない程の語らいがあったのだと思える。



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