Episode 097 課題は待つ勇気。


 ――ウメチカさんは囁く。私とお姉ちゃんに「行こっ」と、その一言だけ。



「また明日ね」との言葉を残し、ウメチカさんは出た。この病室を。お姉ちゃんと私もササッと後に続いた。お顔は……それほど合わせなかった、陸君りっくん春美はるみさんと。


千佳ちか、急にどうしたの?」


 と、お姉ちゃんは声を掛けた。コツ……と、足を止めたウメチカさん。病室から離れた暗く冷たい雰囲気の廊下。俯いたまま、背を向けながら、囁くように語る語る語る……


「ここから先は、もう二人の世界だよ。

 長い時間が創り上げた距離は、子と親の二人の問題。陸君がお母さんに思うこと。お母さんが陸君に思うこと。今はそっと、二人きりにしてあげた方がいいと思う」


 少し泣き声? ウメチカさんの肩は少し震えている? 一瞬だったと思うけど、そう見えたの。お姉ちゃんは距離を詰める、無理のない距離……


「そうだね、千佳。折角だから私たちのお家に遊びに来ない? 思ったより近かったんだね、あなたのお家、私たちのお家から。それにこの間は、私もそらも、千佳のお家にお邪魔したから、そのお返し。初めてだったね、千佳が私たちのお家に来るの……」


「苺パフェ……食べたい」

 と、唐突にウメチカさんは言った。


「じゃあ、そこのコンビニ。今キャンペーン中だから。さすがウメチカさん。コンビニ情報も最新だね。お姉ちゃん、私たちの分も買って行こ。それと、あとは……」


「編み物の糸や棒など。千佳も一緒にやるから」

 と、お姉ちゃんは言う。それって……「そう、あんたも。三人でやるから」


 早くも今後の予定が決まった。


 其々がプレゼントをするという意味。意中の人へ。とくにウメチカさんなら太郎さんへ贈るもの。それと、そこから発展する、お腹の中の子供たちへと。すでにXマスの計画が構想されていたの。お姉ちゃんの脳内では。ウメチカさんも対象にしながら。



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