第二十章 ウララカなこと。
Episode 096 見守り見守られ。
――親は子を。子は親を。
ウメチカさんは静かに語る。この白く広がる世界の中へ。
ごく最近のことだった……
ウメチカさんが病院に来た日のこと。紹介されて、この病院に精密検査を受けに来た日のことだ。聞こえてきたそうなの、診察を待っている患者の中に、
「確かに、そう聞こえたの」と、ウメチカさんは念を押すように強調した。解釈の仕方によれば諄いとも言えるのだけど、ウメチカさんは懸命に伝えようとしている……
「入院してるの? この病院に」と、お姉ちゃんが訊く。私や
すると頷く……
コクリとウメチカさんは頷いた。陸君の表情は変わった。崩れるポーカーフェイス。
その時だ!
ノックの音と共に、担当医が現れた。渋くも渋い先生。名字が
入院患者。その服装からして。
もしかするなら、もしかするかも。意を決し、訪ねようとしたら、
「陸君、
と、明かされた新事実。或いは真実……
遠い存在と、嘸かし思っていたことだろう。驚くべき偶然? 同じ病院にいたことで判明した、何らかの悪戯? きっと素敵なくらいの、再会と思えて……
想い出は溢れる? 陸君にとっては、記憶に残ってない母の顔……
「お、お母さん……」
それでも零れる、子が母を求める言葉。今生の思い出に残る、名場面だった。
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