Episode 092 祭りの後の静けさに、一人黄昏。


 ――窓から零れる夕陽の色。私は一人……静かな場所を求めて此処に来た。



 その場所は、芸術棟の二階。


 ついこの間、お祭り騒ぎで賑わった。学園の行事である文化祭。そして、ドミノが企画したハロウィンパーティーもコラボで。沢山の人達が見てくれた。私の写真……


 学園に存在するクラブは、どれも興味がなく、放課後に彷徨い歩いていた時に、松近まつちかさんが声を掛けてくれたのだ。写真部を設立してくれると。前代未聞のお話だ。


 何しろ、学園で初だから。


 ハロウィンパーティーを機に、写真部は初めての活動を行った。


 壁一面に飾る写真たちは、私が椎名しいなのオジサンから一眼レフのカメラをプレゼントされた日から取り始めた、私の足跡。北陸旅情物語なの。春夏秋冬を彩っている。


 動橋から出発した、北陸本線の各駅。


 福井から金沢まで。時として砺波もある。陸君りっくんと見た、チューリップフェアだ。そのメモリーズに癒されたくて、スルッと……床に落ちる制服。肌を見せるも、メイド服が包んでゆく。あの日以来、この場所では、この服装が定着していたの。鏡に映ると、とっても可愛いから。イベントでも好評だったので。すると、気配もなくいつの間にか、


 背後には、ウメチカさんがいた。


 大きな字幕が出る程に、ギクッという効果音。等身大の鏡の前で、ポーズ&ウインクをしていたから。お顔から火が出そうな程、お顔はきっと真っ赤っか。怪獣のように口から火が出そうなくらい。「あ、アハハ……こんにちは」と、御挨拶。


「可愛いね、お気に入り?」


「え、ええ。写真部にいる時のコスチュームにしようと思ってるの」


「気に入ってくれたんだね、僕ら生徒会からの贈り物」


「もちろんです。おかげで勇気百倍でした。ウメチカさんから頂いたのですから」


 ウメチカさんは照れながらも微笑んでいた。私は少し、心が軽くなっていたの。



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