Episode 065 仁王立ちのウメチカさん? あなたは?


 ――落っこちたのは拳骨。ウメチカさんが二人? どう見てもウメチカさん?



 それでもってお姉ちゃんはクスッと堪え切れずに、人の不幸を笑う。それに続いてウメチカさんとは違ったもう一人のウメチカさん? 訳が分からないけど、鬼の形相で、


「ちょっと君、いきなり何? 人の顔を抓って。挨拶は? 学校で習わなかった?」

 と炎のオーラ―まで纏っている。この世で見る、お化けより怖いものって感じで、


「ごめんなさい、ごめんなさい、私はそら……卜部うらべ空と言います。あなたは、ウメチカさんとよく似てらっしゃるのですか? 念のためお伺いしますけど、私の知り合いの変装ではありませんよね? ああ、誤解しないで下さい? 真面目に訊いてますので」


 ちょっと涙が出てきた。するとだよ、このウメチカさんに笑みが浮かんだような。ちょうどそのタイミングだ。ウメチカさんが二人並んだ。何もかもが同じ? 酷似なの。


「どお? 変装でも何でもなく正真正銘の双子なんだよ、僕たち」

 と、種明かしも兼ねた。何度も何度も確認するように、夢か現実がとも思いつつ。


「本当にソックリなんだ。何のトリックもなしに、ここまでの再現性」


 実は、実はなの。目の当たりにした、体感したことを……


「ウメチカ読んでたけど、変装を上回るような再現性。……これじゃ敵わないよ、陸君りっくんの変装も。やっぱすごいや、ウメチカさん。それに、あの……」


梨花りかだよ、星野ほしの梨花。因みに僕の方がお姉さん。そして、君のお姉ちゃんのお友達」

 と少し屈んで、私と目線を合わしてくれた、もう一人のウメチカさん……梨花さん。


「あれれ? ウメチカさんはお友達じゃないの? お姉ちゃんと……」

 と、ちょっとした疑問を声にした私。お姉ちゃんは作り笑い。バレバレの作り笑い。


「あ、それはね、ちょっと喧嘩……」と言いかけたお姉ちゃんの口を「ムグッ」と押さえて、ええっと……梨花さんの方かな、ウメチカさんに視線を向けながら、


「お友達だよ、もちろん。大の仲良しだから。ねっ、千佳ちか、これで成立だね。僕らはずっと同じ。何も変わらず」と言ったの。何か納得させるように? とも思いながら……



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