Episode 030 十字路、どの道を選ぶのかは君次第。


 ――歩めば、十字路。会場には、その様な道が現れるのだ。



 選択は君次第。私は委ねた。陸君りっくんに。この先の進路を。共に歩むために……


 そして陸君は選ぶ。


 私の手を握り、まっしぐらに駆け抜ける一本道。


 私は、そんな君が大好き。ここに来て、一緒に旅をして、その自覚が明確に。さらにさらに君のお姉さんと出会えたことで、……恋を自覚したの。そして益々、ヒーローになりたいという想いは膨らんでゆく。君と私、何処までも二人三脚なヒーローなの。


 君は、いつの日か語っていた。


 伝説のヒーローのようになりたいと。そのために修行を積んだ空手……って、ちょっとちょっと……「何だ何だ? 怖い顔して」と、陸君は少し後退り。煽る煽る私。


「何々? どの口が言うのかな? 私がヒーローになるって言った時は怪訝な顔してたくせに、陸君も私と同じじゃない。……何その顔? 弁解は? 何が違うの? 何が?」


 陸君の方が、押され気味と思いきや、


「対決。そのために力をつけた。俺には、どうしても勝負したい相手がいるんだ。それこそが伝説のヒーローとやら。バイオリン・ヒ―ローとの直接対決ってやつだ」


 と、いつもの陸君とは思えない表情。


 不敵な笑みを浮かべつつも、猛暑にも負けない程の、ゾッとする表情……特に鬼のような眼差しが印象に残った。……「ありがとな、そら。そいつのこと、色々教えてくれて」


 ブリザード!


 まさにそのような心境。足元からサーッと凍り付くような感覚。


 バイオリン・ヒ―ロー。それは紛れもなく椎名しいなのオジサン。そして、陸君のお父さんということ。言葉にするには、私の語彙力のキャパを遥かに超越している。ここからの帰路を歩むには、思い浮かべるのは、ネガティブな想像が流れてゆく。


 感じるの。陸君は青白いオーラ―に包まれているということを。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る