Episode 028 謎に迫る! 朝霧の輝夜姫のように。


 ――夜を渡る。朝を迎えるために。



 宿には三人ということが判明した。今現在の人数。客は、私と陸君りっくんだけだった。これってどういうこと? 宿の従業員は女将さん一人……つまり春日はるかさんだけなの。


 今宵明かされる、宿の現状……

 宿の名前は、今はもうない……


 実は、このGWが終われば、この宿の営業も終わりを迎える。春日さんは言うの、

「君たちが最後のお客様だよ」と。浮かべる笑みの中に、涙も含まれていた。私たちにできることは労をねぎらうこと。春日さんが一人で支えてきたことに対しての。


 これからの門出についても、明るい未来へ誘えるようにと。そして開くパーティ。私が髪を下ろしている間の出来事。語ってくれた……春日さんが待っていた人のこと。その人こそが、この宿の女将さんだった。つまり春日さんは女将さんの代理だった。


 元々の女将さんは、春日さんのお母さんだった。


 蒸発したのだ、ある日突然。お名前は……春美はるみさんと言った。捜索願を出して捜索する中に於いて発覚する事実。椎名しいなのオジサンが捜している、血の繋がらない妹さんということが浮かび上がっていた。それだけじゃないの、椎名のオジサンと春美さんは……結ばれていた。つまり結婚していた? 或いは籍を入れていた。それはそれは、とある刑事さんが調べていたの。少し前だったかな、生き別れていた双子の姉妹を再会に導いた経歴があるの。名前を出すと、星野ほしの善一ぜんいちさんという刑事さんだった。


 その中で春日さんが知ったこと。

 それは……


 血の繋がりのある姉弟。春日さんと陸君の関係が、今宵明かされたのだ。陸君は初めて知ることとなる。自身の出生の秘密を呆気なくも、思いもしなかった形で。ポーカーフェイスが崩れる時、……私も一緒になって動揺の中の動揺で。その中で問う。やっとの一言の中に「……椎名のオジサンは、俺の……」と。……そう。陸君のお父さんだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る