Episode 023 旅のお供と、この物語の秘密。


 ……何を隠そう、この物語自体に秘密があるのだよ。



 あの日に出会った衝撃、それがキッカケの、とある小説サイト。そこにあったウメチカという作品。その作者様の肉声を直に……聴いたことが始まりだった。


 間違い電話ではあったけど、あの頃の一人ぼっちの暗闇には、眩い一筋の光だった。


 ウメチカという名を胸に刻んだ。


 私は大阪に、パパたちのお家に帰る日に於いて、ある希望を抱くことができた。もしもだよ、彼女と同じ学園に編入すること……お姉ちゃんが通っている学園と同じだ。


 とにかく彼女に会うこと。その楽しみがあったのだ。


 彼女の名はウメチカさん。梅田うめだ千佳ちか……今は星野ほしの千佳となっているけど、彼女も複雑な家庭環境ようだ。彼女のエッセイに綴られていたから。その触発とでもいうのか、何と私も、この春から書き手デビューしたのだ。彼女と同じようにエッセイ。


 タイトルは『空にキラキラ!』……って、実はそうなの。この物語はいつの間にか摩り替えられていたのだ、私の手でエッセイに。この物語の冒頭から既に。


 その流れを駆けるスマホの画面。すると、映っていた。いつの間に。


 覗かれていた陸君りっくんに。ムッとなったのだろうか、私の表情かお。気まずそうに……


「あ、ごめん。そらが急に黙るから、何かあったのかな? なんて」


 という具合に、いかにもご機嫌取り? のような感じになって、ちっとも陸君らしくない。私を制する程の、喩えるなら関白亭主のような感じが、いかにも陸君らしい。


「見たね。スマホの内容、おまけに読んじゃったよね?」


 と、一応は『?マーク』は付けておく。きっと読んじゃったに決まっているから。亭主関白なら、黙って俺について来いとか、私が大阪に帰るのなら、俺も一緒に行ってやるとの一言……まあ、それは、お互いの事情があるから、無理と思うけど……


「空が、ウメチカさんと同じ学園に行きたいなら、俺も一緒に行ってやる」


「へ? 本当に言っちゃった」と、まさかの一言にビックリ驚き、未だ電車内にて。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る