第五章 ゾクゾクなこと。

Episode 021 進むエピソードは、今現在へ。


 ……物語は、終わらないの。


 まだ続けるの、十四歳の夏から十五歳の春へ。今現在に繋げて未来へと。



 因みに、私の誕生日は三月三十日。陸君りっくんと、共に迎えた。同じ誕生日だから……


 エピソード・ゼロからは凡そ八か月が経過。私たちの誕生日を祝して、椎名しいなのオジサンはサプライズを用意していた。二枚のチケットと、それに対する特急券や乗車券も。


「これって……」

 と、声を漏らしながら凝視する、陸君も一緒に。


「二人の誕生日プレゼントだ。今が見頃なだけに、遅れてしまったが……」


 と、椎名のオジサンの声と共に、パッと明るくなる脳内。感情を司る部分で確かに。乗車券は言うまでもなく電車の乗車券。確かに私は、電車に乗ることができなかった・・・・・・


 今はもう……


 陸君と一緒なら大丈夫。だからその乗車券も指定席。サンダーバードでの旅なの。


 行く先は『2023となみチューリップフェア』……確かに確かに今が見頃なの。四月二十二日から開幕。世間ではゴールデンウイークと騒がれる今現在。私はもう……


 電車で土日祝以外、毎日通っている。

 陸君の通うフリースクールに。去年の十月頃から私も一緒に通っている。


 一眼レフのカメラは、肌身離さず持参している。ここでも例外はなしだ。これまで撮ってきたものは、道行く駅の数々。動橋から松任間の駅が対象だった。電車に乗ることに対して、楽しみを設けることとなった。その提案をしたのは、陸君だった。フリースクールに通うことは、椎名のオジサンの提案だった。……それから、それからね、


 私には期間限定というものがあった。


 それは椎名のオジサンが、私を預かる期間のことだ。一年間という時間制限。そのことを知ったのはつい最近。……この夏に、私は帰ることになるの、パパたちのお家へ。


 それを知ったのは、つい二日前。陸君が鬼嶋きしま家の養子だったということも含めて。



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