Episode 018 あの頃のように。
――蝉時雨の中で、プールを満喫。それができる場所が、ここにはあった。
それは夜のお楽しみ。大自然のプラネタリウム……
鬼嶋家の敷地は広く、道場の奥深くへ進みゆくと、そこには白い扉。開けると誘う真夏のテーマパーク。そこには陸君が水着姿で、すでに寛いでいたの。
「よお、
「いいね、いいね」
と、その様な声が出た。本当に久しぶりだ。私の中で私が帰って来たような……そんな感じ。電車の中で束の間に眠り。気付けば鬼嶋家まで、きっと陸君が背負ってくれた。そんな温かさが残っている。その眠りの中、何かが変わったような、そんな気がした。
選んだのは泳いで競争。小学生の頃と同じ。
「それにしても、変わらずだな、空」
「ン? 何々?」「泳ぎもそうだけど、運動神経は抜群。未だに敵わないなあ……」
と、遠い目をする陸君。水の中から一旦出て、ちょっとばかりの日向ぼっこ。年々気温が上昇する温暖化の中にあるけど、ここは避暑地といえる場所。UV対策も施され。
風鈴の音が……
あの頃を呼び覚ました。小学生の頃、幼き日のこと。二人で、ううん、お姉ちゃんも一緒に三人で。でも、陸君を好きなのは、私の方。それは今でも変わらない。今でも。
でも、今までとは違う感覚。薄々と、でもハッキリと違っている。
男の子と女の子の違いは元からあっても、トキメキという種類みたいなもの……
切なさも。表現するには幼い思考? 表現することのできない想い。言葉にさえ。
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