Episode 017 やはり二人三脚。
――アスファルトの焼けるような匂いは、あの日の熱さを蘇らせた。
断片的な記憶。音を失った世界。囲まれ、押し倒され……
途切れる記憶。そこから先が消えようと、残る背中に感じた熱さ。アスファルトの焼ける熱さ……どんなに冷たい涙でも、施しようのない痛み。束の間の冷却は……
ブックオフという空間だから。傍にいてくれる
「
と、撫でてくれた頭。流れ続ける涙は、陸君の胸に包まれた。
「今日は昔みたいに、お泊り会しようか」
「うん……」
そこからまた歩く。二人三脚の道程を。
そして粟津駅に戻り、再び電車の中へ。私は「やっぱり一人じゃ……」と言い掛けるのを遮るように、陸君は「俺たちは二人で一人だから問題ないさ」と、言った。
これって……
別の意味のトキメキ? 陸君は、ずっと私の肩を抱き寄せていた。
「空、お前は昔のままでいい。無邪気で素直な、そのままで」
と、囁きにも似た言葉。私と陸君の身長差は、そんなには……ないようなの。私も小柄だけど彼もまた小柄。百六十センチに届かない彼の身長。それに女の私から見ても……
羨ましい程の綺麗な顔立ち。
どうして今、そう思ったのだろう? とにかく今は、このまま傍にいてほしい。電車の密室空間も、彼となら大丈夫。そしてスヤスヤ、スヤスヤと……
白く光る世界の中へ、誘われたと思いきや、
「……って、ここ何処?」と、辺りを見渡しながら。いつもの目覚めの風景と異なっていたから。すると陸君はクスッと笑って……「ようこそ空、我が道場へ」と言うのだった。
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