第四章 ユラユラなこと。
Episode 016 騒めく夏の課題。
――必ず訪れる出発の時間。向かう動橋駅の足取り重く。何もかもが重厚感。
近づけば近づく程……
切れる息。駅には立てた。駅のホーム。でも、地に足が着かないような感覚。まるで自分の身体が別物のように、意識だけが独立する。或いは乖離しているよう……
動橋駅。そこまでは以前に到達できた。自分の意思で。自分だけの力で。カメラにメモリーされている画像。その第一歩が、この駅の写真なの。もう一歩と奮い立たせる。
頼れるのは自分で、来たる電車に乗り込んだ。
クリーム色の青ライン。ドアが開く時、一思いに乗った。息を吸って止めてから。車窓から見える景色は、気を紛らわす役割をするのかと頼るも、ほんの束の間……
胸が圧迫されるような違和感。視線は車窓から車内の人込みに移ってしまって、しゃがむ。脚がガクガクと震え、頭を押さえる両手で。汗も、涙でさえも……すると、
「お嬢さん、どうしたんだい?」と声を掛けられ、見上げてみると、ヒクッと声も出ない程に涙も。目を見開いたような感覚も。するとするとすると……「おじさんが連れてってあげるよ。お嬢さんが元気に……ほらほら」と、近い近い顔。酒臭い中年男性。グッと手首を掴まれて、そのまま。クラクラする脳。次の駅、粟津駅のホームへ、引っ張られ、
掴まれたままの手首。痛みが走る程に。
「その子を離せ」と、電光石火のように、勇ましき声。聞き覚えのある声……
薄れる意識の中にも、
陽炎の中にユラユラ。でもオーラ―も纏っているように。「は? 何だ、お前」と中年男性が喋っている間に、衝撃が炸裂した。「チェスト!」の掛け声と共に旋風のような蹴りが炸裂したのだ。陸君の蹴りが、中年男性の腹部に命中した。そして私の手は、中年男性から「行くぞ」と言う陸君へと、繋ぐ手がバトンタッチされていた。旋風の次は疾風のように駆ける走る跳ねる……飛び飛びの意識の中を。辿り着いた場所は、できるだけ遠くへ逃れた先の、とあるブックオフ。その店内ならば、追ってはこないだろうと。
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