Episode 015 空、大地に立つ。
――地に足を着ける。
自身を見失わないための鍛え。それこそが基本。
実は、
まず道場に通うこと。
ごく当たり前のように思うかもしれないけど……私には、かなり難易度が高かった。
始めの三日は、
「空手を習う以前の問題で、お前は課題が多いな。まずは心構えから、習ってるのはお前だろうが。一人でここに来る。訓練の場に送り迎えなんて、幼稚園のお遊戯じゃあるまいし。それが訓練を受ける者の姿勢。できて当たり前ことだ」と、怒っている様子。
……涙が、膝の上に落ちる。正座しているから。
「それが甘ったれなんだ。やる前から……
泣けば済むなんて思ってるんじゃないだろうな? 明日から、お前一人で来い。時間も厳守でな。強くなりたいのなら、絶対にやれ。逃げは許さない。そう約束したよな?」
頷く。コクリと。
この日の稽古は、そこで幕を閉じた。
道場に行くには、つまり陸君のお家に行くには、電車に乗ることが必要不可欠。動橋から小松までは三駅。間に粟津があるの。この頃の私は、電車に乗れなかったから。
電車のような人込みの密室空間になると、立っていられなく程の激しい動悸……人が人が、煽ってくるような息苦しさも。私の居場所、存在する場所がなくなるような。
とても恐怖だった。
椎名のオジサンは、そのことを知っていたから、送り迎えをしてくれたのだけど、陸君は……知らなかったのかな? そう思ったのだけど、いいや、お話していた……
椎名のオジサンは話していたの。この事情を、お爺ちゃんを通して陸君に。陸君は知っているはずだったの。そして一言、――
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