第三章 マルマルなこと。
Episode 011 円を描くように。
――円周率のように割り切ることのできない縁。縁もまた円のように思えた。
その心は、この場所にあったの。
満月のように丸い地形をしているマンデー・パーク。ある意味、縁を結ぶ場所……だったようなの。
――それを知ったら、君の運命はまた変わる。
という椎名のオジサンの言葉を制し、バイオリンのネックは割れた。分割した……という表現の方が、正しいのかもしれない。その間から、鉄の板が現れた。二つ折りの。
それが開かれる時、まるで刀のような形状になる。
……って、何故このバイオリンに、このような仕掛けが? それもそれも、まるで
居合抜きのようなスタイルで。すると語る。静かに……
「五線譜を越えた時の、俺の力。俺が、
私は、脳裏に駆け巡った。
事実上のエピソード・ゼロで語ったウメチカさんのこと。私の心に、一歩踏み出すための灯りをともしたこと。つまりキッカケ。そのキッカケが見えない縁と繋がって、広がる青空のような世界へ、私を連れ出してくれたこと。――椎名のオジサンは、きっと私に自由を与えてくれた人。その問いは「強くなりたいか?」ということ。
何故その問いなのか?
私には、守りたい人がいるから。それは一人戦うお姉ちゃん。私が虐めに遭って心が潰れ、不登校になったことが原因で、今でも一人戦うお姉ちゃん。もうこれ以上は、お姉ちゃんの心が壊れてしまう。……だから、私は求めた。椎名のオジサンに。
「私、強くなりたい」と、その一言に、答えを託して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます