Episode 010 想い出のマンデー・パーク。


 一人称が『私』から『俺』……椎名しいなのオジサンに変化が現れた瞬間だ。



 私も安心感が得られる。後部座席でリラックス。そして、バイオリンに飾られている桃色のリボンが気になるも、それを打ち消すようにカメラの……手入れに励む。


 まるで出陣時に拳銃の手入れを行うようなイメージ。スパイ系の女子高生役になり切ったような感じ。とあるお気に入りのアニメキャラのように、格好良く決めた。


 あっ、そのアニメは深夜に放送されていて……


 椎名のオジサンと一緒に観ている。二人の推しということで、そこから徐々に取り除かれてゆく壁。……昨日の夜、チョコンと膝の上。密着して観るに至っていた。


 そして到着する。広い駐車場。


 その向こうには、広がる緑が生い茂っていた。


「さあ、行こう!」と、椎名のオジサンが声を掛け、私も一緒に車を降りた。


 私は、そっと手を出した。すると、繋いでくれた。「エヘヘ……」と漏れる笑い声と共に見上げると、椎名のオジサンも満面な笑顔だった。二人ともアイテムを持参。私は、もちろんカメラ。椎名のオジサンは……あのバイオリン。歩みゆく奥へ奥へと。


 そこにあるもの……


 町を一望できる環境。鏤められた小学校などで遊んだ懐かしき遊具たち。そしてヒッソリと、隅っこにある白いブランコ。その白いブランコに、椎名のオジサンが座った。


 奏でるバイオリン……


 それは天高く、青空に向かって羽搏く音色……


 その調べは、何処か懐かしいもの。釘付け必至の、まだ好奇心満載だった幼い頃の懐かしさに引き込まれるような、そんなメロディー。それにしても、独特な音色で……


「その桃色ピンクのリボン。音を調整してるものなの?」


「まあ、そんなとこかな。大切な人を守るための、誓いの五線譜なんだ」


 そこから知る、椎名のオジサンが秘めていたこと。ここから知ることになる……



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