Episode 007 「オープン・ザ・トビラ!」


 ――ある種の革命が巻き起こった。それが中学三年生の時だった。



 引き籠りが終わる瞬間。お外の光が差し込んだ。お部屋の扉がオープンした……

 あれ程、遮断していた自分自身。でも、その時は呆気なく受け入れられたの……


 そこに現れたのは白馬の王子? 手を差し伸べたのも、その人。確かに白かった。白い服装だったから。丸い眼鏡の優しそうな……オジサンだった。何でもパパが、私のために呼んでくれた家庭教師。ではなく、これから一緒に住む人だったの。


 以前はポニーテールだった私の髪は、ボサボサで下ろしている状態。服装だって、黴臭い……ジャージ。水色の汚れたジャージのまま。「さあ、行こう」と一言のみ、そのオジサンの言うこと。私は流した。どんなに悲しくても流れなかった涙……


 語彙力は、崩壊していた。

 涙がすべてを語っていた。


 そしてそれが、オジサンとの出会い。椎名しいなのオジサンとの出会いだった。とても無口な人で、優しそうだけど、初めは怖いとも思えた。でも、パパが薦めた人。パパが私という娘を託した人だから……まあ、信用はしても良いと思えた。子供にとって親は……


 完全な存在なのだから。


 だからこそ、悲しみの涙。パパとママは、私に愛想を尽かしたの? とも思えて。不登校で引き籠りだった私だから、そうだよね……世間体にも良くないよね。


 それにそれに……


 夜道を走る車。私を乗せて椎名のオジサンと二人きり。遠い、遠い道程へ。そんな中でスッと、私に差し出したの。これって……一眼レフのカメラ。とっても高級なもの。


「あ、あの、いいの? これ」


 それが、やっと出た言葉だ。


「私からの細やかなプレゼント。これから君は一緒に暮らすんだから。生憎それしか教えることができないんでな。わからなかったら訊いてくれ」と、椎名のオジサンは答えた。



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