第二章 クルクルなこと。
Episode 006 事実上のエピソード・ゼロ。
――ちょうど一年前。私にはまだ語ってないエピソードがあった。
何でもない夜……
ううん、何もない夜のこと。見るものも語るものも。あるのは静寂だけ……暗いお部屋の中で一人。同じ引き籠りでも、ゲームに没頭できるのならまだ良かった。本当に何もないの。膝を抱えて時が流れるのを見送るだけの……それに私、以前はどんな顔していたの? と、思える程の表情のない顔。髪だって、ポニーテールだったはずなの。
すると、スマホが光っているの……
誰からの着信もない筈だったけど、それがあった。ボソッと……もしもし……出てみたの。誰なのかわからない電話番号に。相手は女の子。成人女性とは思えない幼い声……
私と同年代? くらいかな、特徴はというと……
女の子なのに、自分のことを『僕』と言っていたなあ。会話らしい会話はなくても、間違い電話でも、その頃の私には……触れた温かさ。私は名乗らなかったけど、その女の子は名乗ったの。――チカ。ウメチカと。そして何故だか調べた、ウメチカという単語を。
グーグルを駆使して、活用も活用で。
梅田の地下とか、そこでやっていたイベントのことも。毎年七月の連休で開催されることも。そして思い出したの。初代キングキングスの二人。何故なら何故なら何故ならば、
私は、そこで見たの。
あなたは覚えてなくても……私は覚えている。そしてウメチカという単語から、とある小説サイトへ導かれて、出会った、ウメチカというタイトルの作品に。そこに綴られていた、そのイベント……つまり『第一回ウメチカ戦』の模様も。ジャンルはエッセイ……
それが、私だけの心の出会いだった。
ウメチカさんとの出会い。ボブの可愛らしい女の子だったのを覚えている。私も小柄だけど、彼女も私と変わらない程の小柄。百五十はなかったように思える……
そして徐に読む。暗闇の中、明るい画面のエピソードたちを、喰らうように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます