Episode 005 何があったの?


 ――陸君りっくんは幼馴染。毎年の里帰りで会っている。小学生の期間ずっと。



 私が今のように北陸に住み始めたのは、中学三年生の夏休みから。中学二年生の秋、二学期が始まって……死のうと思う程の虐め。学校へ行くのが怖くて仕方のない日々……


 不登校、そして引き籠り。


 具体的な映像が脳内に、今でも蘇る時がある。

 涙は、自然と零れるようになって……大分マシになった、以前よりも。


 強くなる度に涙が、流れるようになってきた。私の心が動き始めたのもその頃から。そして陸君は、いつも一緒にいてくれる、私のパートナー的存在。


 でも、そっと二日前……

 陸君の謎に触れることになった。彼が何者なのかという部分に……


 その発言元は、オジサンだった。椎名しいなのオジサン。この人は、私のパパと深い関係にあるらしいのだけど、血縁関係の有無も定かではなく、私を預かってくれた理由も……


 謎多き中で、与えてくれたものは一眼レフのカメラ。


 そして陸君に、鬼嶋きしま流空手を習うことも薦めてくれた。私の二つのキラキラは、椎名のオジサンが与えてくれたもの。その時点で、ある謎が蔓延っていることに気付いた。


 それは……椎名のオジサンと陸君の関係。


 接点がないと思われていた二人だったけど、この二学期から、私がパパとママのお家へ戻ることと、陸君も一緒にということをお話した時に、知ることとなった。


 ――鬼嶋陸という、本当の名前を知らない子について。でも、私には、そうであっても陸君は陸君。今はまだそう思える。鬼嶋陸という少年は、私と共にいるあの子なの。


 それでも知らないことばかり……

 どうして陸君が、フリースクールに通っているのかということも含めて。


 戸籍上では、私と親戚。


 鬼嶋という、お爺ちゃんとお婆ちゃんに預けられている孫ということも変わりはない。



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