Episode 004 蘇った涙とは?


 ――向かう先は、私たちと同じ。その少年も今日から始まる。



 下車した駅は松任。そこから共に歩んで着いた場所。


 ――そこが、フリースクール。


 訳ありの子が集う学校。私が通い始めたのは一年前だから、学年でいうなら中学三年生となる。本当なら、高校受験があったのだけど……今もまだ、ここにいる。



 そして今年の夏休みを機に、受けてみることにした。

 お姉ちゃんが通っている学園の編入試験。大阪にある学園だ。中高一貫だそうだ。


 ――かい


 卜部うらべ海。


 それがお姉ちゃんの名前。何か不思議だね、陸君りっくんと三人揃えは、海陸空となるの。その編入試験は、私だけではなく陸君も受けるの。合格したなら、一緒に……


 そこには、ヒーローの登場を待つ子が多い。


 ここに来る前の私のように、虐めで苦しむ子が沢山いると思うから……心が破壊された辛さを知るのは、もう私だけで充分。そして一人戦うお姉ちゃんをも守れるような、そんな力を求めて、陸君に鍛えてもらったの。枯れた涙が潤うことも何度も、何度も……


 蘇っていた涙。心に潤いを取り戻していた。


 その結晶で、手に入れた力は、鬼嶋きしま流空手。

 何もなかった私が得た力なの。厳しい修行の数々で何度も泣いた。でもね、でもね、


「頑張ったな、そら


 と、その一言を言ってくれた陸君。陸君も私と同じく訳ありの子。フリースクールには長いこと通っている。お爺ちゃんとお婆ちゃんに預けられている子。鬼嶋……という名字も、そこに預けられているからなの。本当の名字は……きっと名前も謎の子だったの。


 そのことを知ったのは、つい二日前のことだったから……



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