Episode 003 登場するもの?
――凡そ三十分の道程。電車は目的地の最寄りの駅まで、私たちを運んだ。
車窓から見える流れる景色は、変化しながらも余韻として残る。その中を、新たな景色がインプットされる。私は撮る。鉄道とは無関係でも、その時ここにいた証。
そこは、桜の木が並ぶ所……
目的地も近い。土日祝以外は、そこに通っている。私は二年前に不登校になって、この地を訪れて……
初めは電車に乗るのも、ままならない程……
ここに来る前の学校で受けた、数々の虐めの場面がフラッシュバックするの。その頃は弱かったの、とても。だから強くなりたいと願って、手に入れたこの力――拳を握って立ち回れるようになるまで。目の当たりには、一人の少年に寄ってたかって、逃げ場もない程に囲む……「金出せ」と恐喝する少年たち。三人ほどいるかな。
人目に付かない、とある路地裏での出来事。
「何だ? お前」と、三人の内の一人が訊くから、胸を張って答える。
「ヒーローだ!」と。すると、するとだよ。笑うの、三人とも。私を見て「ガキなんかに用はねえんだよ」と、『ドン!』と、その効果音に字幕が出そうな程に突き飛ばされて倒れるも、スクッと立ち上がる。そして一瞬だ。立ち回りの中、拳で一撃……
私は小柄で、三人とも大柄だけれど、速さは負けない。なので「遅―い」との言葉と共に、三人とも、まるで疾風ように、その場に崩れ倒れた。
それでもって恐喝されていた少年は……
「あ、ありがと」と、少し怯えた様子。私の横で見ていた陸君は、その少年に手を差し伸べて「君も、このお姉ちゃんのように、強くなりたいかい?」と、問うの。
「お、お姉ちゃん?」と少年は、目を見開くような素振り。「私、高一」と言うも「僕と同じ中二と思ってたよ」と、少年は言うのだ。なので……『ガーン』という効果音と共に字幕が、私の脳内で炸裂したのだ。そして、この力が二つ目のキラキラだったのだ。
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