たった一つ好きなことを

歌うことが楽しかった

踊ることが好きだった

その気持ちだけで強くなれる

何が正解でも不正解でも

ただ好きなことを楽しいことを

できるならそれでよかったんだ


こんな歌に価値なんてない

こんな踊りは見せられない

絵でも曲でも文でもなんでも


誰かと比べると悲しくなって

もうやめたくなってしまうし

誰かのためだって頑張ろうとしても

僕じゃなくてもいいってなってしまうよ


いつも悲しむたびに辛いたびに

手を止めてしまいたくなるけれど


僕は歌うのが好きだった

それだけあればいいって

誰かと比べて、誰かのためだとか

そんな気持ちよりもただ一つ

歌うことが好きだったんだ

それだけあればいい



退屈な世の中

窮屈で我慢だらけ

自信なんてなかったし

天才だって思いたかったけど

なれやしなかった


周りを見渡すたびに反吐が出る

つまらない、くだらない、性格悪いって

ああ、最悪な環境だ


好きな人なんてそうそういない

大体は自分と合わない、嫌いな奴ばかりだった


輝いてる人を見ると自分の暗さが滲みて痛かった、辛かった


その度に何もかもを諦めてしまいたくなった

もういっそのこと死んだほうがいいって思ってたんだ

こんな人生に価値なんてない

こんな僕は死ぬべきだったって


でも僕には歌がある

どんな気持ちも綴れる歌詞も

それさえあれば満たされていた

歌ってるとき、書いてるとき

夢中になれるこの瞬間


全てのことを好きなるなんて

物好きにはなれなくてもいいよ

ただ一つ、たった一つだけ

好きなものさえあれば

まだ楽しめるから

僕らは幸せだったんだよ



使命とか生きる理由とか

生まれた意味だとか

僕らは皆んな

英雄になろうとしてた

格好良さとか美しさを求めては

僕らは傷ついてたり、威張ってたり

それを糧にしてまた偉大になるぞって


もう頑張れないよ

頑張らなくてもいいんだよ


好きなことをしてるとき、そんなことは気にならなかったんだから


僕らは何度も何度も打ちひしがれて

何もかもを信じれなくなったりして

明日がどうしようもなく嫌いになって

目につくもの全てを恨んでしまったりするけれど

一つだけ

たった一つだけ

信じられるもの、変わらないものがある


君の好きなもの、あなたの好きなもの

彼の好きなもの、僕の好きなもの

どうしても嫌いになれなかったこと

たった一つだけの僕らの好きなこと


好きだったから

嫌になったり、臆病になったり、苛立ったり

いろいろ振り回されてるよ

だけどそれでも

誰にどう言われようが

比べてみて、劣ろうが

見られなくても、評価されなくても


自分自身がそれを好きだったってことは変わらなかったでしょ


ただ好きなもの一つ

それだけあれば

それだけあるだけで

この透明も空虚さも

何もかもが鮮やかに彩られるから


例え価値が無くても

ただ一つだけ

好きなことをしてるときは

僕らは夢中になれた


ほとんどが嫌いだった

こんな世界無くなればいいって思ってた

価値なんてない

死んでしまえばいい

希望なんてない

夢なんてもう見れない


苦しくて辛くて我慢ばかりが人生だって思っても


たった一つだけの好きなことをしているときだけは忘れられた


そのことだけ

そのことだけは忘れないで


たった一つの好きなことを

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