第12話
全速力で聖堂まで走ってきた
聖堂はほぼ全壊に近い状態で、大理石で造られた壁も柱も、焼き尽くされていた。
「ど……して…………こんな……」
「…………っ……」
すると、聖堂の中央付近に、
「…………
慌てて駆け寄り、怪我の状態を確かめる。
いつの間にか芽依の隣に来ていたトキが、枢の足元の瓦礫を取り除く。
「ーーーーあら残念。巫女程度の力では、このくらいが限界ね」
「!」
突然頭上から降ってきた声にバッと顔を上げると、死神の女が上空からこちらを
芽依と目が合うと、女は目を細めて
その女の
眉間に思わず力が
「…………枢に、
「ええ。でもダメね。やはり太陽神の比護を受けた聖女に宝珠を使わせないと」
宝珠は聖女にしか扱えないものだ。巫女である枢には、負担が多すぎたのだろう。
黒く染まった宝珠。本来宝珠とは、白い輝きを放つもの。それをあそこまで
あれほど穢れた宝珠を元の正常な状態に戻すのは時間がかかるし、今の自分の能力では不可能だ。
だが、あのまま彼女に触れさせていれば、どんどん宝珠は穢れていく。まず、あれを死神の女から引き離さないと……。
「トキくん」
「ーーーー下がってて」
最後まで言い終わらないうちに、トキが空中へ飛び上がる。
「ーーーー……さまー……!」
「…………?」
「……芽依様ーっ!」
「……
「……聖堂から爆発音が聞こえて、何事かと思って駆けつけたんです。王も心配されていました」
……そうか。
これほどの威力の爆発だ。聖堂だけの被害だと考えていたが、音は下の街まで聞こえているかもしれない。街の人々が騒ぎ出すのも時間の問題だ。
ここに騒ぎを聞き付けた人が来るのは危険過ぎる。
「……杙梛さん。枢を王城まで連れていって下さい!それと、街の人の避難をお願いします。ここは危険なので、近付かないよう指示を」
「芽依様は?!」
「……私はここに残ります」
「そんな……っ。芽依様をお一人でこんな危険な場所に残して行っては、私が裕祇斗様に怒られます!」
杙梛にはトキ達の姿は見えていないのだろう。一人ではない事を伝えようとして……芽依はそれを止め、別の事を口にした。
「裕祇斗なら大丈夫。……それに、ここには宝珠があるので、私はここから動けません。ご理解下さい」
宝珠。それは祭りの時以外は厳重に保管されている
昼間の事件があって、杙梛も宝珠についてのあらかたの知識は頭にあったのだろう。
芽依にしか
「…………分かりました。こちらはお任せ下さい」
杙梛は
「…………気を付けて」
「芽依様も、どうかご無事で」
一礼してその場を離れる杙梛を見送り、芽依は宙を見上げる。
上空では、トキと死神の女の
トキはすぐにでも剣を振るえる体制を
微笑む口元とは
「その
「……お前の命令に従う道理はないわ」
「魔王様の命は、太陽神の分御霊を消し、光ある人間達に不幸を与える事……。宝珠を使えば、この国のほとんどの人間が消えてしまう。それは……君達がやろうとしている事に反してるでしょ……リーフィア」
「ーーーー黙れ」
トキに名前を呼ばれた瞬間、死神の女ーーーーリーフィアの瞳が完全な怒りに
「……確かに、魔王様の目的はそうね。……でも私はーーーー貴方にも消えてほしいのよ」
今まで聞いたことのないくらい低い声で呟く女の表情は、抑えきれない憤りに満ちていた。
「…………魔王様の分身でありながら、魔王様の命に背くお前のその
刹那、彼女の体から力が爆発する。力を解放した
トキはその風の中に飛び込み、リーフィアの懐を狙って剣を
しかし女は素早く後ろに下がってそれをかわし、瞬時に鎌を出現させてトキの剣に叩きつけた。金属同士がぶつかり合った激しい音が響き、トキは芽依の立っている地上付近まで押し戻される。
「………………!」
空中で体制を立て直そうとするも、目にも止まらぬ速さで近付いてきた女が更にトキに
トキは両腕を交差させて受け身を取るも、数メートル後方へ押し出される。
「…………これで私に勝てる気でいたのかしら。……もし本気を出しても、貴方は私に勝てないわよ?」
トキは自身の前に剣を構える。休む
ぐぐっと押されるものの、トキはその場から動かなかった。
「…………別に、勝つことが目的じゃない、から」
「………………は……?」
ぐっ、と今度は逆に、トキが彼女の鎌を押し戻す。力が
ーーーーその時、トキは左手に鎌を出現させ、リーフィアの鎌目掛けて振り上げた。
「……な……っ」
鎌を上に
勢いよく引っ張り、自身に引き寄せる。
「…………っ、く」
宝珠がリーフィアの体から離れる
すると、黒い輝きを放っていた宝珠が白い輝きを取り戻す。
「っ……」
「トキくんっ!?」
トキがゆっくりと地面に降りると、芽依は慌ててそこに駆け寄った。そこで、トキから宝珠を手渡される。
「…………ごめん。少し、……時間かかった」
「そんな事より、腕……!腕、見せて」
指先から上腕にかけて広範囲で
「…………ひどい……」
「…………大丈夫。動けるから」
トキはただ
死神は元を
……トキに触れる直前で宝珠の穢れが無くなっていた。
宝珠の性質を
「ーーーーさすが、我が
近くまで降りてくる気配がして、芽依はゆっくりと顔を上げる。
リーフィアは怪我を負うトキを見て、ふっと笑った。
「……でも、その怪我ではまともに戦えないでしょ。……もう、ーー消えて良いわよ」
すると、彼女は黒い
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