鳥籠
痛々しい視線の中、ようやく幼稚園についた。
私達は最後の乗車だったらしく、そのまま真っすぐ幼稚園に向かった。
その割には、とても長い……本当に長く感じた十分間であった。
少しでもバスが揺れ体重が移動し、その度に這い回る自分のおしっこが、気持ち悪くて仕方がなかった。
そんな移動も終わり、園児が次々と降りていく。
私達は、わざと最後に降りた。
通路側の娘が先に降りるのは当然なので、席を確認するのは容易だった。
私のおしりの形に……濡れているのが確認できた。
幸い、スカートのお尻側は大丈夫だ……下に敷くほどの丈がないのだから当然だ。
私は右手でスカートの裾を押さえ、バスを降りた。
予想通り、あたりはざわめき、信じられない物を見る目で、私を見ている。
一人顔色を変えていない中年ぐらいの人が、おそらく事情を知る一部なのだろう。
『ことりようちえん』
これが、私がオモラシをレポートする現場……
この幼稚園という場が、「ことり」の名の表す通り、『鳥籠』と私は捉えた。
誰かの手を煩わせなければ餌をついばむことも出来ない鳥籠。
私も、誰かの手を煩わせなければオムツを替えてもらえない。
にも関わらず、オモラシはしなくてはならない。
借金によって、鳥籠の外の自由に飛び回れる世界も忘れなければならない。
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