娘の笑顔

 その後、どのように自宅まで戻ったかは覚えていない。

 留守番していた娘に、幼稚園が決まったことを伝え、とても喜ばれた。


 だが、気が気ではない。



「えぇとね、その幼稚園なんだけど……お母さんも一緒に通うから」


「幼稚園まで送り迎えしてくれるの?」


「いや……そうじゃなくて……お母さんも一緒に幼稚園に入ったの」


「えへへ……おかあさんといっしょ!

 いつも一緒で私嬉しい!」


「えっ、あ……そうね……」





「……はぁ」


 裕子はベッドから起き上がると、そのままよろよろと立ち上がる。



 娘は届いた制服を試着し、クルクルと回ったりスカートをつまんで淑女のような挨拶をしたり。

 本当に嬉しそうで、幼稚園に入れてあげることが出来て良かったとは思う。


 思うのだが……



「お母さんは着てみないの?」

 

 とても、とてもではないが娘の前でこの姿になる気にはなれなかった。

 どうせ、来月の頭から毎日一緒に登園するのにだ。


 にも関わらず、袖を通せなかった。



「ところで……このオムツはなぁに?」

 

「そ……それは……お友達に頼まれて一緒に買った分よ」


「ふうーん?」


 そう、オムツについては説明すら出来ていなかった。


 ……いや、この臨床はそもそも秘密にしなければならないのだ。

 これで良かったのかも知れない……

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