オムツ受理

「そして、これがこの研究でいちばん重要な、オムツです」


「な……!? それ、子供用じゃないのですか?」


「そうですよ、サイズ以外は子供用です。

 ですが、裕子さんにぴったりのサイズですのでご安心ください。

 実験用の特別仕様でして、かなりぶ厚めに作ってあります」



 そういう問題ではない。

 この薄緑色の紙おむつには、リサが夕方になると必ず見る、国営放送のキャラクターが笑顔でプリントされていた。


「…………」


 何も言えなかった。

 想定が甘かったのはこの短い説明でも理解したが、それでもなお甘いのだろう。


 幼児の心理……私はどこまで幼児にされるのか。


 気がつけば、また指輪に手が伸びていた。




「そしてオモラシですが、実験であることは秘密にしてください。

 それを言い訳にされては、心理の研究にはなりません。

 幼稚園側も一部の先生しか把握していません」



「…………」


「トイレは使用禁止です。全てオムツに漏らしていただきます。

 幼稚園としてはオムツ離れを推進してきますが、絶対に使ってはなりません。

 おまるもなるべく避けてください。


「……はぃ……」



「こちらが利尿剤です。

 本当に、本当に極めて強力ですので、接水もこまめにお願いします。

 入園式の日の朝から、朝昼晩の食後に服用してください」


「ぁ…………はい……」


「いいですか、こまめな接水です。

 一般的な成人女性の一日当たりの必要摂取水分量は2Lとされていますが、これを服用する間は5Lは必要と思ってください」


「えぇと……想像がし辛いのですが……」


「一般的に食事などの固形物から接種される水分が約1Lです。

 なので普通なら、それに飲料等でもう1L飲むのが普通なのですが、早崎さんの場合はもう3Lは意識して飲んで欲しいということです。

 もちろん幼稚園側にもそれは伝えておきます」


「そんなに飲めるかしら……」


「大丈夫です、苦もなく飲めると思います。

 そして、毎日必ずレポートを書いて送信していただきます」


「……はい……わかりました」



「また何かわからないことがあったら電話なりメールなりしてください。

 ではこの服やオムツ、入園の資料や他数点を後日郵送いたしますので、必ず受け取ってくださいね」

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