第48話 ジオラマスターの【人形庭国】7(1/2)




 ――——……




「……え?」


「あれっ?」



 オルゴールの咆哮を聞いた後だった。オレたちは真っ白な光に包まれた。


 そして視界が戻ったと思ったら、ダンジョンに入った時に到着する初期位置—— 王都の外にある廃教会はいきょうかいだ。大聖堂のものより小ぶりだが竜の像がある ——にいた。


 何が何だか分からない。しずくも首をかしげていた。

 普通なら開け放たれている扉も閉じられていた。さらに施錠もされていた。出られない。ガラス円柱はあるのでダンジョン外に出ることはできた。



「どうなったんだ?」


「わかんない」



 王都はどうなったのだろう? デトネティア様やオルゴールは? 情報は一切なかった。とりあえず廃教会から出る方法を探すか。


 そう思った時だった。


「「!」」


 目の前にウィンドウが表示された。


 これは……報酬アイテムか!






[ スキル ≪ 幻獣召喚・従鉄竜じゅうてつりゅうオルゴール ≫ を獲得しました。 ※初攻略者の限定報酬です。 ※” 秘術 ”のステータスが要求値を満たしていません]




[ アイテム ≪ 真鍮しんちゅううろこの紋章 ≫ を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です]




[アームズ ≪ 竜狩りの剣 ≫ を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です]




[ アイテム ≪ リソスフェアの心臓 ≫ を獲得しました ※初攻略者の限定報酬です ]




[アイテム ≪ リソスフェアの外殻 ≫ ×50を獲得しました ※初攻略者の確定報酬です]





「おおおおお? なんかいっぱいもらった!」


「新しい召喚スキル!」



 オレが能力値不足だったオルゴール召喚、雫は無事に使えるらしい。ちゃんと活用できそうで良かった。


 ていうかこれはアレか。ここまで戻されて廃教会からも出られなくてアイテムをもらえたってことは、イベント全部終わったから帰れってことだな。


 うーん、我ながらとんでもないギミックを動かしてしまった気がする。


「どれどれ……」


 安地っぽいしアイテムを確認してみよう。





 ≪ 真鍮鱗の紋章 ≫

 真鍮の鱗でできた紋章。心から信頼するごく限られた者に女王デトネティアが下賜するもの。


 遥か昔に王家と交わった竜の力。それを色濃く発現したことによりデトネティアは幼くして女王となった。しかし最後の原始竜の目覚めが迫る時勢で行われたそれは、貴族たちによる責任の押し付けに過ぎなかった。


 王都のどこかに同じ紋章が刻まれた扉があるという。





 ≪ 竜狩りの剣 ≫

 元は何の変哲もないロングソードだったもの。従鉄竜オルゴールに一時的に取り込まれたことにより変質した。


 固有のアームズスキルによりオルゴールの力をにわかに模倣し、音波による破壊を生じさせる。


 アームズスキル:オルゴールの喉鳴らし

 効果:ダメージを与える音波を放つ。





 ≪ リソスフェアの心臓 ≫

 いわ原始竜げんしりゅうリソスフェアの心臓。秘術的な作用を引き起こす詳細不明な物質 ” 竜媒りゅうばい ” を大量に生成しつつ脈動する。


 星の始まりから佇んでいたという原始竜、その一柱であるリソスフェアは地の力を司っていた。


 メイン・スプリングは原始竜の心臓を用いて ≪ 竜媒ジェネレーター ≫ を製造した。千年先の未来の技術といわれた圧倒的技術力の秘訣を尋ねられた彼女は、毎度のように ” わたしドセイジンだから ” と答え周囲を呆れさせたという。





 ≪ リソスフェアの外殻 ≫

 岩の原始竜リソスフェアの極めて堅牢で重い岩のような外殻。装備の素材となる。


 星の始まりから佇んでいたという原始竜、その一柱であるリソスフェアは地の力を司っていた。


 原始竜は竜媒りゅうばいで星を満たし多くを芽吹かせたが、その役割は徐々に終わりを迎えていた。





「……紋章とかめっちゃ気になるヤツじゃん」


「扉の先にレアアイテムとかショートカットとかがあるのかしら?」


「心臓のテキストは察するにあれか。≪ 竜媒ジェネレーター ≫を作りたかったら【サターン・ステーション】で製造技術系のスキルを入手しろってことか?」


「メイン・スプリングは【サターン・ステーション】からの転生者っていう設定だったのかな?」


「ますます早く行きたいな【サターン・ステーション】……それで雫」


「分かってるわしゅー、気になるわよね。私もよ。


 コホン、ではいきます……スキルを使用! 召喚っ、従鉄竜オルゴール!」



 空から光が降る。室内だけど。細いレーザー光が素早く動いて積み上がっていく。3Dプリンターみたいだった。


 そしてすぐにオルゴールが現界する。パイプオルガンの姿で現れたけど、すぐに変形して四つ脚有翼の竜の姿になった……なったんだけど……。


 鉄をまだ吸収していないからだろうか。大型犬くらいのサイズだった。そしてあの美しい音色で鳴く。



「オォォン」


「きゃ~! カワイイ~!♪」



 雫は非常にご満悦だった。しゃがみ込んでぎゅってしてなでなでしている。オルゴールも心地良さげだ。個人的にはもうちょっと大きい方が迫力あって良かったかも。こんど鉄を食わせよう。



「よしっ、じゃあ習合してみよ!」


「オォォン」


「習合!」



 オルゴールが雫の肩に乗る。そして雫が手を打った。




 ――全身鎧の騎士が立っていた。

 人型の竜のような意匠の鎧だった。




「カ゛ッコ゛い゛い゛!!!!!」



 オレは思わず叫んでいた。


「なんだよその男の子の変身願望を爆発させたような全身鎧は……! オレにも……オレにも着させてくれ……!!」


 でも習合スキルとか使えないので無理な話だった。だって筋力科学ビルドだし。その事実が重くのしかかりオレの膝を折っていた。ほぼ土下座の体勢だった。



「えへへ、そんなにカッコいい?」


「うらやまし゛い゛!」


「尻尾も動くよ」


「あ゛あ゛あ゛あ゛!」


「使えるスキルの検証はおいおいかな?」


「……秘術にもステータス振ろうかなぁ」



 そんなことしたら器用貧乏まっしぐらだけど。







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 ※報酬回ですが長くなったので分割します。

 ※竜媒エンジン→竜媒ジェネレーターに変更しました。




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