第27話 高端(たかばし)ゆりあ2
「おまえが
「圧倒的誤解だああぁー!」
なんだその何重にもおよぶ誤解は! とも叫びたかった。けどそれは叶うことはなく、とにかく攻撃に備えざるをえなかった。
ギギッ! ――バリバリバリピシャァァァンッッ!!!!
女の子の得物から
「弱い。弱すぎる……どうしてこんなヤツを光さんは……!」
「おまえ強すぎだろ!! どうなってんだ!」
年齢の割に冒険者歴はある方なんだぞこっちは! なのにどうして小学生みたいな女の子に後手後手になるんだ! いったいレベルいくつなんだよこの子は!
「くっ……! ゼンテイカ!!」
ゼンテイカを展開する。この際プライドは抜きだ。あっちはどうも本気らしい。とにかく生き残る必要がある。躊躇していたらやられる。
「搭乗式アームズ……」
にわかに警戒する素振りを見せる女の子。
しかし――
ジュオッ……ドバァァァン!!
姿を消したと思ったら、紫電を撒き散らしながら一気にゼンテイカの懐に入り込まれた。彼女が通ったと思しき地面は焼け焦げ、一部は赤くくすぶっていた。
「いっ……!?」
「遅い」
ギィィィィンッ!!!
「うっそぉ!?」
機関砲の砲身が両断されていた。一瞬で使い物にならなくなってしまっていた。
そしてそれに唖然としている暇もなく、今度はガクン! と機体が傾く。脚部に異常が発生したとモニターがけたたましい警告を発していた。右前の脚部がぶった切られてバランスが完全に失われていた。そのまま倒れ込む。
「痛ぇ……!」
こんなに派手に転倒したのはいつぶりだろうか。そんなことを考えていたら、ハッチにX字――熱でオレンジ色になった―― の切れ込みが入って破壊される。無様に横たわるオレを女の子が見下ろしていた。
「かくごしろ……これでわたしが光さんの弟子に……!」
「ッ……!!」
万事休すか。雫のことが脳裏によぎった。雫のことだけが気がかりだった。
と、その時。
「わあぁー!? ストップストップ!! ストップですぅ~!!」
これまた可愛いらしい女の子の声が響いた。さっきからプラズマを撒き散らしてるヤベーやつのそれではない。別の女の子の声だ。
「ゆりあちゃんダメー!!」
しゅるしゅるしゅるっ!
オレをボコボコにした女の子—— おそらくゆりあちゃん ―― とやらの背後から何かが伸びてくる。
緑色で葉っぱが付いているあたり植物のツルだ。オレが知っているツルよりかなり太いけど。そのツルがゆりあちゃんを
助かった……のか……?
外でゆりあちゃんじゃない方の女の子の声が聞こえる。内容からするにゆりあちゃんにお説教しているらしい。いいぞもっとやれ。
「しゅー? 大丈夫ー?」
「あぁ、まぁ……なんとか生きてる……」
生きた心地はしないけどな。ゼンテイカから這い出したところで雫がいて、とっさに抱き締めそうになったけどここが学校だったのを思い出して留まった。
「あのっ、あのっ、すみませんでしたウチのゆりあが……!」
女の子が駆け寄ってくる。ヤバいヤツじゃない方だ。やっぱり小学生くらいの女の子で、桃色のツヤがある茶髪が印象的な女の子だった。オレにぺこぺこ頭を下げている。
ちなみにヤバいヤツの方はなんかよく分からん植物(召喚獣の一種か?)に拘束されて宙ぶらりんになっていた。無表情で大人しくしている。
「……先に言っておく。オレは光さんの弟子じゃない」
「はいっ、こっちでも確認ができました! 本当にごめんなさい!」
そりゃあもうこっちが恐縮するぐらいに頭を下げられた。小学生だろうにしっかりしていると言うべきだろうか。まあ本当に頭を下げるべきはこの子じゃないんだけど。
「ゆりあちゃん、光さんに弟子はいないんだよ!? こっちのお姉さんが
「……ごめんなさい」
「もっと申し訳なさそうに!」
「ごめんなさい……」
前と後の違いはよく分からんかったわ……。
でもまあこれで誤解は解けたか。
オレがそんなふうに胸を撫でおろしていると、雫がゆりあちゃんに近づいて
「すっごい強いんだねー。この装備は何? レベルいくつ~?」
「あ、それは≪
アームズの方は≪ マイクロプラズマブレード ≫。刀身に並んだ放出口から小さなプラズマを高密度に放出して対象を溶断します」
「……ひとの武装をぺらぺらしゃべらないで」
「ゆりあちゃん? そんなこと言ってる場合じゃないんだよ。お兄さんの搭乗式アームズ壊しちゃったんだからちゃんと弁償しなきゃダメだよ?」
「う……」
「あ、申し遅れました。私は
「「500!?」」
小学生で500って何歳からダンジョンに潜ってたら到達できるんだよ。つい声に出して驚いてしまった。
「そしてこっちは
耐久ビルド。
耳を疑うビルドだ。だって耐久って経験値
だけど、その直後にもっと耳を疑う言葉が待っていた。
「レベルは900代です。先天性レベル保持者というやつですね」
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