第16話 ダンジョンの水全部抜いてみた【清流のダンジョン】4
というわけでダンジョンに到着した。
「ダンジョン内の湖もどこかにつながってると思うんだ」
ダンジョンは立地の影響を受けることがある。海にあるダンジョンは海生生物がエネミーだったり、活火山の近くにあるダンジョンは内部がマグマだらけになっていたりとかだ。
そういう事例を
「うーん……でも仮につながっている先があったとしてどうするの?」
「フィールドボスに邪魔されずに水抜きできるかもしれない」
「つながってるならそこを通って来ちゃうんじゃない?」
「いや、ちょっと調べたんだけど」
「こんな感じで透水性……水を通過させる性質のある地質なら水位の連動が起こりうるらしい。つまり水は通れるけどエネミーが通れないようなルートだな。それであれば可能性がある」
「なるほど! 分かったわ!」
オレがやってほしいことを理解した雫。すぐに1体の召喚獣を召喚した。
「来て! ミア!」
「カァー!」
ミア。真っ黒な体羽を持つカラスの召喚獣だ。雫の肩の上に現界した。
見た目はほとんど普通のカラスだ。けど大量の羽をバラまいて
え? 名前の由来?
……サルミアッキだってさ。
「ミア! なんかそれっぽいの見つけてきて!」
「カァー?!」
その指示じゃ分からんだろ……。
「ミア。この先にある大きな湖以外の湖とか池を探してくれ。水たまりレベルでも良い。頼んだ」
「エネミーには気を付けてね!」
「カァー!」
合点! といわんばかりに高らかに喉を鳴らすと、ミアは空高く舞い上がっていった。
そしてミアが戻ってくるまでそれほど時間はかからなかった。
「探そうとしなきゃ見つからんだろこれは」
「地底湖でしょ。コレほぼ地底湖でしょ」
雫の主張も分からんでもない状況だった。
それは一見すると水たまりだった。隆起したような、あるいは地層がめくれ上がったかのような岩の下に水が満ちている。人間の目みたいな形をした入口——横幅30メートルくらいの隙間――の洞窟、その奥に水が
メインの湖からはけっこう離れている。岩の上は
「偉いよぉ~ミア~!」
「カァー!」
雫はミアをめっちゃナデナデ頬ずりしている。そしてミアは誇らしげだ。順当なふるまいだと思う。
「これなら排水もしやすいな。岩場の上に立って能力を使って、そこの谷に落とせば安全だ」
洞窟の目の前はちょっとした谷になっている。水は流れていないけど、たぶんそのうち渓流に合流するだろう。排水してくれと言わんばかりだ。
「じゃあ雫。頼む」
「りょーかい。んーむむむ、やっぱりかなりたくさん水があるよ。そんな感触がする」
岩場に登り、両手を足元に向ける雫。それと同時に洞窟の中からざわざわと音が聞こえはじめ、やがて水があふれ出した。ほどなくしてそれはダムの放水のごとき水流となっていた。
グガアアアアアアアァァ……——!
「「!」」
遠くから獣声が聞こえる。メインの湖にいるモササウルスだ。ヤツが声を上げるということは、当たりらしい。
さらに言うなら―― 声を上げることしかできないらしい。
結局、水抜きには丸1日を要した。家族には泊りになることを伝え、雫にメシを食わせ、雫を休ませ、雫が読みたいといったマンガのページをオレがめくったりしながらの作業だった。
しかし何はともあれ水を抜くことができた。あの巨大な湖は今や姿を消し、水底だった地面が陽の光に照らされている。
それから……。
「ふっふっふーん。所詮は魚よ!」
「爬虫類では……?」
地面にフィールドボスのモササウルスが横たわっていた。呼吸はあるっぽいけど動ける状態じゃなさそうだ。その証拠に近づいてもまったく襲って来ない。
無理もない。あの巨体だ。水中にいないと自重でつぶれてしまうのだろう。延々にスリップダメージを受けているはずで、体力が尽きるのも時間の問題だ。そのことは分かっているんだけど、近づいてみるとスゲー怖かった。単純にデカイし。
などと考えていたら、モササウルスが光の粒子になって拡散した。そしてオレと雫の方に寄ってきて吸収される。経験値になったらしい。オレたちにとっては莫大な経験値量だった。まっとうにやり合ったら絶対に倒せない。
「っと、ここまではサブクエストだった。鞘を探そう」
「ミア! またよろしく!」
「カァー!」
ミアを再召喚して鞘の捜索に移る。そしてオレたちも探した。鞘かなと思ったら木の枝だったり、ぬかるみに足を取られて転んだりして散々だったが、オレとは別のエリアを探していた雫から、待ちわびていた声が上がった。
「しゅーーー! 見つけたぁーーー!!」
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