第11話 黎明記機械(れいめいききかい)4





「大変申し訳ございませんでしたぁー!」



 試験場の床でしずくが土下座していた。観客が解散して、試験場にまだ用がある人たちだけは周囲にいたけど(関わらんとこ……)と言わんばかりに視線は反らされていた。


「うぅっ、れいちゃん……どうかお幸せに……!」


 土下座したまま泣いてやがる……今からでも間に合う他人のフリとかないかな。


相川あいかわさん、お気持ちは十分伝わりました。ありがとうございます。なので本題に戻りましょう。例のアームズを見せていただけますか?」


「あ、はい! すぐに!」


 雫が立ち上がってアームズをロードする。さびさびの刀が雫の右手に現れた。


「……これを無警戒に掴んだと」


 返す言葉もございません。


「鑑定さんに見てもらったのですよね? 鑑定結果も見せてもらえますか?」


「これです」


 紙片を受け取った光さんは目を通す。そして鳴司さんに「どう思われますか」と言ってて手渡した。


「不完全かぁ。損壊ではないんだねぇ。未完成とは違うのかな? 見た感じ刀としては成立してるとは思うけど」


「さび付いていて斬れないので、ということではないのでしょうか」


「うーん、それは損壊扱いになると思うんだけどねぇ……これはどうやって手に入れたの?」


 オレの方を向いて尋ねられたのでオレが答える。


「水面に突き刺さっていました」


「「水面に??」」


 この刀は水面に突き刺さっていた。そうまるで、勇者にしか引き抜けない聖剣のように。


「なんか水面を歩けたんですよ」


「「水面を歩けた??」」


 自分でも何を言っているのか分からないが、とにかくあの時は水面を歩くことができた。


 まあダンジョン内のことなので何があってもおかしくないけど。


「女の子を追いかけてたら歩けてしまって……」


「あー、そういえば。あの子なんだったんだろう? 歩かないで、なんていうか浮いて移動してた」


 れいさんの「それを先に言え」という視線が刺さる。めちゃくちゃ痛い。


「……その子がこの刀に関係あるのは間違いないでしょう。そのあたりを攻めてはどうですか?

 鑑定さんにも言われたかもしれませんが、やはりそのダンジョンをもう一度よく探索してみることをおすすめします。それからダンジョンの外も。何かヒントがあるかもしれません」


「あ」


 と、そのとき鳴司めいじさんが声を上げた。

 鳴司さんは自分のものと思われる普通の刀—— 錆びたりはしていない。ショップとかでいつでも売ってるレア度のないもの―― を取り出し、呪われアームズと見比べていた。


「わかったかも」


 そう言われて光さんと雫とオレも2つを見比べる。


 だけど……うーん。


 保存状態的な差異はある。けどどちらも刀だ。それ以上でも以下でもない。つかがあって、つばがあって、刀身がある。何かを斬るための道具だった。3人で首をかしげる。


「これさ、あれが無いよ」


「というと」


 光さんが尋ねる。鳴司さんは「いや、中にはそういうものもあるかもしれないけど」と前置きしつつ簡潔に答えた。



さやが無いんだよね」





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