第8話 黎明記機械(れいめいききかい)1
「
驚きすぎて思わず呼び捨てになってしまった。いやしかし。
ネットで見たことのある顔。軍事系のアーマー、アームズ。そしてキツネ耳。
間違いない。橿原光だ。
搭乗式人型アームズの最高峰≪グランドリーフ≫の保有者にして、数多に所持する軍事系アームズによる苛烈な戦闘スタイルで” パラベラム ”の異名を取るに至った科学ビルド冒険者・橿原光—— それがオレたちの目の前にいた。
「こんにちは」
「あっ! は、はひ! コンニチハ!」
ひえぇー、橿原光と会話してるよ。自分が。自分が! マジで信じられねぇ。
という感じでオレは動揺しているのだが、橿原光の方はその平静な眼差しを揺るがす様子はない。これがトップクラスの冒険者の風格か。
「あなたたちが呪われアームズで困っている冒険者?」
「そっ、そうですハイ! こっ、この度はご助力いただけるということで誠に申し訳——じゃなくてありがとうございます!」
「苦労は察するわ。力になれるかは分からないけど、ともあれ話を聞きましょう。まだ少し用があるから、9番のテーブルで待っていて」
「はっ、はいー! 分かりました! お待ちしてます!」
橿原さんは小さく頷くと、オレたちの横を抜けてカウンターに向かっていった。ドロップ品の換金とかするのかもしれない。高価なもの拾って来れるんだろうなぁ。
それはそうと通り過ぎた瞬間めっちゃ良い匂いした。
「……っ! はぁー……びっくりしたぁ……」
「しゅしゅしゅしゅしゅー!? 見た!? 今の見た!?
「痛ぇ!? バシバシ叩くな!」
「どどどどうしよう!? サインもらう!? めっちゃ美人! 一緒に写真撮ってくれないかなぁ!?」
「落ち着けー! おばかー!!」
「あ゛ぁアァー!? グリグリー!?」
「今から! 橿原さんに相談に乗ってもらうんだよ! サイン頼むヤツがいるか! 機嫌損ねたらどうすんだ!」
「光ちゃんはそんなことじゃ怒らないもん!」
「どっから来るんだその自信!! いいから行くぞ!」
見つかったんだけど……。
――プシュ!
「ごくっ、ごくっ……ぷはーっ! やっぱ仕事終わりの1杯は格別だなぁ!」
「「???」」
え? 誰かいるんですけど……?
なんか知らんオッチャン……いやかろうじてニーチャンか? が9番のテーブルで飲み物—— っていうか酒を飲んでる。しかもかなり出来上がった感じで。
いや、マジで誰?
「しゅー、変な人がいるわ」
「なんだあの人……」
「9番テーブルで合ってるのよね?」
「あ、ああ」
「なにアレ。不審者? こんなところでお酒飲んでるなんて。しかもまだ明るいのに」
「橿原さんにあのテーブルって言われてるんだけどなぁ」
「声かけるしかなくない?」
「簡単に言うなよ。組合で酒飲んでるとかヤバイやつだぞ絶対」
たじろぐオレたち。しかしその背後から声がかかった。
「
橿原さんだった。もう用が済んだらしい。相変わらず表情は乏しいけどさきほどよりはなぜか柔和になった気がする。気のせいか?
「お待たせしました。どうぞ、そちらにかけてください」
「え? え? 橿原さん、この
「パーティーメンバーの
ま、マジで? この酔っぱらいが橿原さんと同じパーティーなの? ということはこの人は橿原さん並の冒険者だってこと? ……そんなことある??
「飲み物をどうぞ」
橿原さんはそう言ってペットボトルのお茶をテーブルに置いた。ついでに樟葉鳴司なる人物の手から酒缶を取り上げ、よく分からない方法でぐしゃぐしゃに潰してから消失させた。何それ怖い。
「ありがとうございます、橿原さん。何から何まで。あっ、さっきは橿原光なんて呼び捨てになってしまってスミマセンでした。驚いてしまって……」
「構いませんよ」
良かった。鑑定さんが言っていたとおり、かなり
「ですが。ひとつ訂正を」
「え?」
流れが変わった。橿原さんの「ですが」がやけに語調が強かった。一体なんだ……? そんなに重要なことなのか?
「今の私は”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます